被告の立ち会いなしに家宅捜索 長野・岐阜両県警、証拠は不採用
長野、岐阜両県警が、勾留中の被告に令状を示さず被告の立ち会いもなしに家宅捜索したのは「重大な違法」だとして、長野地裁松本支部が公判で押収物を証拠採用しなかったことが10日までに公判資料から判明した。被告の国選弁護人だった吉沢裕美弁護士によると、家宅捜索の手続きが違法と認められるのは珍しいとし「警察の実務が変わることを願う」と話した。 2022年3~4月、長野県松本市や岐阜市などで起きた特殊詐欺事件で、受け子と出し子だった松本市の男(40)が窃盗罪などに問われ、地裁松本支部の永井健一裁判官は7月8日、懲役3年の判決を言い渡した。 公判資料によると、家宅捜索は、逮捕時の初回を除くと22年5月9~31日に松本署が3回、岐阜南署が1回実施。いずれも被告に令状を示さず、立ち会いなしだった。被告は9日の捜索後、押収品目録を渡されて自宅を捜索されたことを知り、警察に抗議した。 刑事訴訟法は、本人の立ち会いが困難な場合、隣人や地方自治体職員が代理できると定める。両署は松本市職員を立会人とし、令状を示した。
地裁支部は、松本署に勾留されていた被告に令状を示し、立ち会わせるのは可能だったと判断。被告が抗議した後の3度の家宅捜索は「令状主義の精神を没却するような重大な違法がある」として、押収物を証拠採用しなかった。