1933年公開の元祖から最新作『ゴジラxコング 新たなる帝国』まで!強さと哀愁を纏ったコングの歴史を一気にたどる
日米が世界に誇る怪獣王ゴジラとコングが激突する『ゴジラxコング 新たなる帝国』が4月26日(金)よりついに公開。生誕70周年を迎え、アカデミー視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』(23)も大ヒットしているゴジラだが、対するコングも昨年90周年という節目の年を迎えたばかり。ゴジラ誕生にも影響を与えた元祖怪獣王、コングの歴史を改めて振り返ってみたい。 【写真を見る】悪の科学者がコングを模して開発したメカニコングが登場する『キングコングの逆襲』 ■荒々しいだけでなくペーソスあふれるキャラクターが観客の心をつかんだ元祖『キング・コング』 コングのデビュー作が1933年公開の『キング・コング』である。映画監督カール・デンハム(ロバート・アームストロング)は謎の孤島、髑髏島でゴリラのような巨大な怪物コングを発見。見世物にしようと連れ帰るが、コングは鎖をちぎって逃げだし街を大混乱に陥れる。前半は恐竜が生息する髑髏島での怪獣バトル、後半はNYでの都市破壊と見せ場を満載したアドベンチャー大作で、長い年月を経たいまでもそのサービス精神に舌を巻く。なかでも長い腕や身軽な身のこなしで挑むコングと巨大なアゴで攻めたてるT-レックスの異種格闘戦は圧巻のひと言! スリル満点の戦いは後に『キングコング対ゴジラ』(62)に受け継がれ、時を経てモンスター・ヴァースへとつながっていく。コングや恐竜たちはSFX監督ウィリス・H・オブライエンによるストップモーション・アニメーションで撮影。コングや恐竜たちの凝った造形や、生命感あふれる振り付けにも注目してほしい。コングはデンハムに同行していた女優アン(フェイ・レイ)に心奪われ、その結果命を落とす。荒々しいだけでなくペーソスあふれるコングのキャラクターも観客の心をつかみ、映画は世界中で大ヒットした。 『コングの復讐』(1933)は、3月公開の『キング・コング』の大ヒットを受け、わずか9か月で製作された続編。コングによる損害賠償に追われたデンハムが、再び髑髏島を訪れてコングの息子キイコに遭遇する。『ゴジラxコング 新たなる帝国』の小猿スコの原型といえるキイコは、白い毛並みのミニコング。デンハムと一緒にいた歌手ヒルダ(ヘレン・マック)に心奪われ、沈没する髑髏島から彼らを守って命を落とす。父親と違って人懐こいキイコだが、恐竜や大熊と挌闘するファイトシーンも披露した。オリジナル「コング」シリーズは2本で終了したが、オブライエンはのちに少女に育てられたゴリラが大暴れするジョン・フォード製作の『猿人ジョー・ヤング』(49)でもコマ撮りでゴリラを担当し、アカデミー特殊効果賞に輝いた。 ■ダイナミックな着ぐるみ怪獣バトルが満喫できる日米提携作品『キングコング対ゴジラ』 オブライエンはその後もコング映画を模索し、61年にはコングがフランケンシュタインの怪物と闘う『King Kong vs. Prometheus』を企画(プロメテウスとはフランケンシュタイン博士を指す)。この企画はオブライエンの手を離れ、プロデューサーたちの間を巡って東宝創立30周年を記念した日米提携作『キングコング対ゴジラ』として完成した。コング、ゴジラ共に初のカラー作品となる本作は、テレビ局によってファロ島から連れだされたキングコングが日本でゴジラと激突するエンタテインメント大作。『キング・コング』の影響で怪獣特撮を目指した特技監督、円谷英二によるダイナミックな着ぐるみ怪獣バトルが満喫できる。熱海城を破壊しながら激突するコングとゴジラの姿は、『ゴジラxコング 新たなる帝国』で両怪獣がピラミッドを挟んで対峙するシーンの原型かも? 東宝はその後もコング映画を構想し、『キングコングの逆襲』(67)を完成させた。モンド島のキングコングが、悪の科学者ドクター・フー(天本英世)がコングを模して開発したメカニコングと東京タワーで激突する。コングがピンで活躍する本作は、オリジナルのT-レックス戦を着ぐるみで再現した肉食竜ゴロサウルスとの死闘や大海蛇との戦い、東京タワーをよじ登るメカニコングの高所バトルと見応えある展開。メカゴジラのルーツというべき秀逸なデザインのメカニコングは、ぜひともモンスター・ヴァースに登場してほしいメカ怪獣だ。 ■1970、80年代に本家コングが復活 『ジョーズ』(75)でアニマルパニックに注目が集まると、本家コングも『キングコング』(76)として復活した。石油採掘のため未知の島に向かった石油メジャーが、そこでコングを発見。NYに連れ帰るが暴れだし…というオリジナルに準じた内容になっている。ただし、本作はコングとヒロインのドワン(ジェシカ・ラング)の交流を軸に展開。ドワンを守ろうとする青年ジャック(ジェフ・ブリッジス)を環境保護団体の活動家にして、彼やドワンが大企業と対立するというカウンターカルチャーの流れを汲む作品になった。島に棲息しているのはコングと巨大ニシキヘビのみで、NYでの大暴れもコングとドワンの逃避行が中心。怪獣映画としては物足りなかったが、のちに7度のオスカーに輝く特殊メイク、造形の神リック・ベイカーによる気高きコングのスーツや演技は素晴らしい出来だった。 その10年後には続編『キングコング2』(86)も公開。貿易センタービルから落下したあと、治療を受け生き延びていたコングに加え、雌猿レディコングや彼らの息子ベイビーコングも登場。米軍とのバトルを繰り広げたり、ヒロインに『ターミネーター』(84)のサラ・コナー役でブレイクしたリンダ・ハミルトンを起用するなど見どころが満載だが、装甲車との戦い以外は盛り上がりのない残念な結果に終わった。 ■「LOTR」のピーター・ジャクソンがオリジナルをリメイクした『キング・コング』 2005年には「ロード・オブ・ザ・リング」三部作で巨匠になったピーター・ジャクソンの『キング・コング』(05)が公開された。オリジナル版の完全リメイクを目指したジャクソンは、時代設定を合わせたうえ、古代生物が棲息する髑髏島での大冒険からNYでのスペクタクルまで、あらゆる見せ場をスケールアップして再現。コングはCGで描かれたが、ルワンダの保護区で野生のゴリラの生態を研究したモーションキャプチャー担当のアンディ・サーキスのなりきりぶりも手伝って、見応え満点の決定版に仕上がった。そんな本作を製作したのはユニバーサル映画。実はユニバーサルは76年のリメイクの際に映画プロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスと争奪戦を繰り広げ、90年代後半には一度ジャクソンと契約をしたがローランド・エメリッヒ監督作『GODZILLA/ゴジラ』(98)とのバッティングを避け製作を中断した過去を持つ。「ロード・オブ・ザ・リング」の大成功を目にしてジャクソンと再契約し、3度目の正直でやっとコングのリメイクを実現した。 ■コングがモンスター・ヴァースに参戦した『キングコング:髑髏島の巨神』 『GODZILLA ゴジラ』(14)の完成後、レジェンダリー・ピクチャーズは『キングコング対ゴジラ』のリメイクを目指し怪獣シリーズ、モンスター・ヴァースを発表。第2弾として『キングコング:髑髏島の巨神』(17)を製作した。ビル・ランダ(ジョン・グッドマン)率いる怪獣研究機関モナークが、地底空洞説を実証するため髑髏島に上陸。コングや巨大怪獣たちに遭遇する。コングをはじめスカル・クローラーやバンブー・スパイダー、リバー・デビルなど怪獣たちが続々と登場。コングと戦闘ヘリやスカル・クローラーとの迫真のバトルのほか、コングとカメラマンのメイソン(ブリー・ラーソン)の交流を盛り込むなど、都市破壊以外の見せ場を網羅した満足度の高いコング映画に仕上がった。なお本作は、ドラマシリーズ「モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ」の第1話とそのまま連携している。 ■コングとゴジラの頂上決戦が実現した『ゴジラvsコング』 約60年ぶりとなるゴジラとの頂上決戦が実現したのが、モンスター・ヴァース第4弾『ゴジラvsコング』(21)だ。本作で地上を制するゴジラに対し、コングは地下空洞の守護神であることが判明。ムートーを倒すため目覚めたゴジラは、髑髏島にいるコングを敵とみなし戦いを挑む。不安定な海上での第1ラウンド、香港でビルを壊しながらの第2ラウンドと多彩なロケーションでのバトルは大迫力。ゴジラの圧倒的パワーで絶命しかけたコングが電気ショックで蘇生するなど、『キングコング対ゴジラ』を彷彿とさせる見せ場も楽しめる。コングと心が通じる髑髏島の少女ジア(カイリー・ホットル)や、彼女の保護者でコングを研究しているモナークのアイリーン(レベッカ・ホール)はレギュラーとなっていく。 前作で髑髏島が地下空洞世界の一部が隆起した島だと明かされたが、それが空洞世界の比重の高い『ゴジラxコング 新たなる帝国』では大きな意味を持ってくる。ゴジラとの対峙はもちろん、スカーキングはじめコング同様に二足歩行できる巨大猿怪獣たちとの遭遇など、コングの見せ場が満載に。心優しく気高き怪獣王の大暴れをスクリーンで堪能してほしい。 文/神武団四郎