スターダム“最後の試合”でこらえた涙…退団する林下詩美と黄金世代の絆「お前は本当の同期だから」マリーゴールドで始まる“自分のための挑戦”
最後のスリーカウント…林下は涙をこらえた
それぞれの個性をぶつけ合うような試合で勝者となったのは、黄金世代の中で出遅れた感のある飯田だった。周りと比べると身長が低く、ケガによる長期欠場もあった。そんな飯田の勝利。しかもスリーカウントを取った相手は林下だった。飯田と林下はスターダム生え抜きの同期である。 フィニッシュとなった技は変形キン肉バスター。技名は「達者でな!」という。団体を離れた先輩レスラーへのメッセージを込めた技だったが、それが今回は同期への餞になった。 「飯田、たった2人の、私たち2人だけのスターダム10期生。お前は本当の同期だから」 林下の言葉からも関係性が分かる。試合後の飯田は、こんな言葉を残した。 「(スターダムに)入って初っ端、詩美はもうてっぺん行ってさ。超悔しかった気持ちもあるし。でも自分だって黄金世代として食らいついてきて、今日、詩美からスリー取って。今度はシングルでお前の前に立ってスリー取って、差がない同期、ライバルとして見られる存在になるよ」 聞きながら涙をこらえる林下。あらためて話を聞くと、飯田に負けたことへの気持ちも語ってくれた。 「飯田は他の黄金世代と比べたらまだ実績は残せてないけど、私に全然勝てる実力を持った人なので。今日はタッグ(での勝利)だったけど、シングルでもそうだと思ってます。 だから今日の結果は不思議なものじゃないですね。ずっと飯田が活躍する姿が見たかったんです。私が相手だけど、最後にそれが見れました」
マリーゴールドで始まる「自分のための挑戦」
タッグマッチが終わると、今度はタッグパートナーの上谷が林下に対戦を求めた。今ここでやりたいと。決まったのは5分間のシングルマッチ。やはり組むだけでなく闘って気持ちを確かめ合いたかった。それがプロレスラーというものなのだろう。 前日のファンイベントでは、林下も上谷も「次にリングで会う時はシングルマッチで」と声を揃えた。上谷としては“次”が待ち切れなかったのかもしれない。あっという間の時間切れ。林下は“黄金世代”を味わい尽くしてスターダムを去った。 「今日は今のスターダムだけでなくこれからのスターダムを感じたかったし、みなさんにも見てほしかった。黄金世代のみんなが、これからのスターダムをどんどん大きくしてくれると思います」 これからはスターダム所属ではない、QQのリーダーでもない林下詩美が始まる。 「自分のための挑戦ですね。それでまた成長できると思います。みなさんにも見守ってほしい。新しい気持ちでプロレスができる。楽しみが凄く大きいです」 スターダム最終試合の3日後、林下やジュリアが所属する新団体「マリーゴールド」の旗揚げが発表された。「新しい挑戦、新しい林下詩美をお見せできたら」と記者会見での林下。スターダムでやり切ったからこその、力強い言葉だった。
(「濃度・オブ・ザ・リング」橋本宗洋 = 文)
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