「シティポップ・スタジオ」に11アーティストが集結。松本隆の秘話トークも。
代表曲のカバーに大瀧詠一の名盤の裏話も語られて
名曲が続いて盛り上がる中、シティポップのブームの先駆けとなった竹内まりやの「プラスティック・ラブ」を土岐麻子がカバーした。原曲は84年の竹内の休業からの復帰作となったアルバム『VARIETY』に収録。2010年代後半になり、海外で注目された。まさに都会的なサウンドでアンニュイなナンバーだが、土岐は華やかなトーンで歌い上げて、スタイリッシュな色合いを際立たせる。 さらに、シティポップの代表曲「真夜中のドア」の松原みきの「隠れた名曲」と紹介された「ニートな午後3時」は、小比類巻かほるがカバー。81年春の資生堂のCMソングで「Neat,neat everyday!」がインパクトを放った原曲を、小比類巻は持ち前のソウルフルなボーカルで彩り、ゾクゾクするほどのカッコ良さだった。 中盤には、数え切れないヒットを生んだ作詞家の松本隆をスペシャルゲストに迎え、伊藤銀次、杉真理とトーク。はっぴいえんどからの盟友・大瀧詠一の歴史的名盤『A LONG VACATION』の全作詞を手掛けたことについて、「大瀧さんは売れなかった時代が長くて悩んだみたいで、頼んできた」と経緯を語った。 収録曲の「恋するカレン」は、軽井沢の松本の別荘で打ち合わせをした際、出来上がっていた詞をディレクターが「フラれた男の気持ちがわかる」と気に入っていたとか。伊藤は「最後の捨て台詞がすごい。きれいな曲だけどザクッとくる」と言い、松本は「時々本気が出ちゃう」と笑っていた。 その「恋するカレン」を伊藤が池田聡と歌う。サビのハーモニーを2人で考え、エヴァリー・ブラザースをイメージしたというデュエットは、伊藤の緩やかな歌声と池田の抜けのいい清涼感が溶け合い、エバーグリーンな楽曲が輝き出すよう。伊藤が捨て台詞と称した「哀しい女だね君は」まで歌い上げると、2人は目を合わせて微笑んでいた。
レアなコラボレーションもたっぷりと
松本のトーク後半は佐藤竹善、土岐麻子と。佐藤は太田裕美が歌って大ヒットした「木綿のハンカチーフ」に触れて「非常に残酷な歌」と話すと、松本は「そんな残酷なことを書いた覚えはないです」と苦笑い。太田のディレクターに「松本くんの詞は都会的すぎる」と指摘され、田舎からの視点で遠距離恋愛の物語を考えた、との逸話が語られた。 アルバムで松本の作詞曲をカバーしている土岐は、薬師丸ひろ子が歌った「メイン・テーマ」を話題に。同名映画の主題歌だったが、実は父親でサックス奏者の土岐英史が、桃井かおりが歌うシーンのバックで演奏していたと明かす。家族で映画を観に行き、曲を耳にして小学生ながら「若い女性が背伸びしている世界観に憧れたんです」と話していた。 また、松本自身が作詞家として手応えを感じた作品として挙げたのは「スローなブギにしてくれ」。「ものすごくナチュラルな男の歌が書けて。その女の子版を作ったら松田聖子になった」との話が興味深かった。 番組ではこの他にも、南佳孝の「モンロー・ウォーク」、池田聡の「モノクローム・ヴィーナス」、小比類巻かほるの「Hold On Me」、香坂みゆきの「ニュアンスしましょ」など、シティポップの名曲が次々と披露されていった。 後半では、EPO作詞・作曲で土岐麻子が歌い、資生堂CMソングとして「あなたっていくつなの?」に耳馴染みがある「Gift~あなたはマドンナ~」を2人でデュエット。オフコースの76年のアルバム『SONG is LOVE』に収録されたほろ苦いボサノバ調の「青春」を、作詞・作曲した鈴木康博と佐藤竹善で歌ったりも。手練れのシンガーたちのレアなコラボレーションもたっぷり堪能できた。 この番組を同じ出演者たちでそのままコンサートにした「シティポップ・スタジオLIVE vol.2」は、3月28日にLINE CUBE SHIBUYAで開催される。 取材・文:斉藤貴志 <公演情報> シティポップ・スタジオLIVE vol.2 公演日程:2025年 3月28日(金) 会場:LINE CUBE SHIBUYA