「家族に応援してもらってます」18禁美少女漫画の世界で起きている若手女流作家の台頭
ここ数年、アダルトエンターテインメント業界での女性クリエイターの活躍が目覚ましい。アダルト系の商品を扱う会社に女性広報がいることはもはや「普通」であり、企画・制作畑で活躍する女性も増えている。 【画像】こ、ここであのエロい絵を……! 女性18禁漫画家の「仕事べや」 そして、それは漫画の世界にも広がっている。18禁美少女漫画は長らく男の世界の娯楽で、作者もほとんどが男だったが、ここに若い女性の漫画家が進出してきているのだ。 なかでも活躍が著しいのが若手女性作家の玉乃井ぺろめくり氏だ。同人・商業・アダルトグッズの箱イラストなど、さまざまな分野で男たちの下半身を刺激する作品を送り出し続け、Xのフォロワーは10万人以上。ご本人に話を聞いた。 ――玉乃井ぺろめくり先生は、どんな方なのでしょうか。 「おはよーございます、こんにちは、こんばんは! エロ漫画やエロ絵を描いてます。ハードエロ方面が得意でーす。抜ける作品を作れるようにがんばってまーす」 ――ハードエロ、というのはどういうものでしょうか? 「私の解釈ですけれど、痛いものとかではなくって、“漫画だからこういう表現もあるよね”みたいな。そういうイメージで描いたもの、です。たとえば、24時間イカせ続けるなんて現実にはできないですけど、漫画ならエロく描けるでしょう? 私は“縛り”とかが好きですが、それはもしかしたら……最近あったことなんだけど、父親が隠していたAVが出てきて、縛り有りのSMものばかりだったのと関係があるのかなと思うこともあります(笑)」 ――若い女性がエロ関係の仕事をしていることに対して、周囲の反応は? 「私の漫画を読んでから会った人からは、必ず『女の人だったんですか?』って驚かれます」 ――特徴的なペンネームですが、由来は? 「エロを描く人なので、ひと目で〝エロを描く人だ!〟ってわかってもらえてるといいなーって思って。でも、直接的な感じじゃなくて、なんとなーく、なぜかエロっぽいといいなーって思ってつけました」 ――最近はどんなお仕事を? 「コンビニで売ってる漫画雑誌の表紙やアダルトグッズのパッケージとか。去年は私が描いたイラストでオナホールの特製パッケージを作っていただきました。2021年と2023年の冬のコミックマーケットのカタログ内でも、イラストを描かせていただいています。色々な人に見ていただける商業作品の仕事も好きですし、自分のやりたい表現がやりたいようにできる同人誌も、両方好き」 ――どうして18禁漫画を描くように? 「子供の頃からとにかく漫画が好きで。今でも、おうちに万単位であるくらい好きなんです。エロも好きで、そうなると漫画でエロい絵が見たくなってきて、自分で描くようになったという感じかな。それで、SNSにエロ絵をアップしていたら、出版社の方から声をかけていただき、商業活動をはじめました。AVも好きなんだけど、2次元の絵のほうが萌えるから描いているのかな。漫画家にこだわっているわけじゃなく、抜けるもの、エッチなものっていいなーって」 ――そもそも、どうしてエロが好きになったのですか? 「エロいものって生命の根源でしょう? で、日常のいろいろなところに、エロってあるじゃないですか? 壺の曲線とか、昔の彫刻とか、コーラの瓶にもエロさってあるし、音楽を聴いていて〝うーん、このベースの音がエロい〟って思うこともあるじゃないですか。そういうのが好きで、絵や漫画が好きだから、エロ漫画家になったっていう感じなのかな」 ――周囲には秘密にしているのでしょうか? 「友達は知っている人と知らない人、両方います。家族には、何年か前に見本誌の誤配達でバレてしまって(笑)。以来、応援されながら描いてます……」 ――平成までは男性向けの18禁美少女漫画を描く女性漫画家は少なく、美少女漫画雑誌1冊につき一人か二人、という感じでした。令和の今はどうでしょう? 「私が商業活動をはじめたのが5~6年前。そんなにキャリアは長くないので昔のことはわからないんですけど、たとえばコミケットみたいな即売会だと、女性作家がひとつのエリアに集まっていることがよくありますし、出版社の飲み会にも結構います。男のヒトばっかりっていう感じはないです」 ――女性が男性向け18禁漫画を描くにあたって困ることといえば何でしょうか。 「それはもちろん、男性器がないこと(笑)。たとえば“男が自分のモノを見下ろす構図”を描いた時、自分の絵が正しいかどうかはわからない。これは虚像なんじゃないかって(笑)。逆に、セーラー服とか、衣装を描く時は自分で着ればいい。女の体はよくわかる」 ――最近、注目していることはありますか? 「Vチューバーさんがお絵かきの際の“お供”になっています。戌神ころねさん、周防パトラさん、Ksonさん、猫元パトさん、レグルシュ・ライオンハートさんとか、聞きながら描いています。あと、mofusandっていう可愛い猫のキャラクターが描かれたブランドから出るグッズに今、ハマってます」 ――今後やりたいことはなんでしょう? 「やりたいことは結構できているので、新しいことをやりたいかもです。とにかく、面白ければジャンル限らず、なんでも。あと、やりたいことっていうか、ほしいのは私の漫画で抜けたっていう〝おシコり報告〟です。Xでも、即売会で言っていただけても、すごく喜びます。 私にとっておシコり報告って、レストランで美味しいご飯を食べた時に〝シェフに挨拶をさせてください〟ってやるのと同じなんですね。抜けたよ、っていうのは、美味しかったよって言われるのと、同じ。なのでよかったら、Xや公式サイトに私が描いたものの案内がありますので見ていただいて、抜けたらおシコり報告をお願いします。とても喜ぶので」 一昔前では考えられなかったことだが、令和の今はさまざまなジャンルで性別を問わずに新たな才能が生まれている。しばらく男性向け18禁美少女漫画を読んでいなかった読者諸兄はぜひ、手に取ってみてほしい。時代の変化が感じられるはずだ。 取材・文:来栖美憂 くるす・みゆう フリーライター。人文、社会問題、サブカルチャーなどを主な守備範囲とし、雑誌・新聞・ネット等、メディアを問わず、記事の取材・執筆を中心に活躍。著書多数。 取材協力、写真提供:玉乃井ぺろめくり 玉乃井ぺろめくり 公式サイトURL: peromekuri.blogspot.com X ID @peromekuero
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