米国が誇る「強い個人消費」は本当に続くのか…最大のリスクは大統領選と“心理不況”の関係
米国の約27%が「破滅的な消費」
「米国の景気回復は力強い。英国と日本とは異なる道を歩んでいる」 米国家経済会議(NEC)のラエル・ブレイナード委員長は2月15日、このような見解を示した。ブレイナード氏が米国の力強さの要因として挙げているのは個人消費だ。 【写真】バイデン氏とトランプ氏はともに「美人妻」でも有名
インフレが続いているにもかかわらず、米国の個人消費は堅調を維持してきた。だが、ここにきて変調の兆しが出てきている。 米商務省が15日に発表した1月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は前月比0.8%減と、市場予想(0.3%減)を大きく下回った。落ち込み幅は昨年3月以来、10ヵ月ぶりの大きさだった。 米国の昨年末の商戦は予想に反して活況を呈したが、「最後のあがき」だったとの指摘がある。米国民の約27%が「破滅的な消費」をしており、ミレニアル世代やZ世代でその傾向が顕著だと明らかになっているからだ(2月1日付ブルームバーグ)。
随所に見られる消費の減速
だが、貯金をはたいて37万円のバッグを購入するといった消費が長続きするわけはない。 新型コロナのパンデミック下では、政府から支給されたマネーのおかげで余剰貯蓄が生まれた。多くの家庭がそれを使い果たしており、今年も消費者が米国経済を下支えするという期待は消えたと言わざるを得ない。 消費の減速は随所に見られる。今年のバレンタインデー商戦の売上高は前年に比べて減少した。昨年のハロウィンや年末商戦の売上高が過去最高だったことを踏まえると、減速感は否めない。「今年のバレンタインでは『1ドルショップ』の販売が増えた」と言われており、節約志向が高まっている印象もある(2月15日付日本経済新聞)。 趣味性の強いスポーツ用品の需要が減退するとの懸念もあってか、スポーツメーカーのナイキの株価がこのところ下落している(2月17日付日本経済新聞)。
相場を牽引する巨大ハイテク7銘柄
個人消費とともに米国経済の好調を象徴しているのが高株価だ。主要な株価指数であるS&P500種は史上初めて5000を突破した。 相場を牽引しているのは巨大ハイテク7銘柄だ。「マグニフィセント・セブン(MAG7)」とも呼ばれ、アップル、アマゾン・ドット・コム、アルファベット、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラで構成される。この7社の株式時価総額は12兆ドル(約1800兆円)で、日本、英国、カナダの時価総額の合計に匹敵する。 だが、一握りの企業が相場を押し上げる構図に対して警戒感が強まっている。 2月に入り、市場関係者から相次いでテスラを問題視する見解が示されている。昨年第4四半期決算が4四半期連続の営業減益になるなど成長への期待が薄らいでいるためだ。 6社が人工知能(AI)を巡る熱狂に後押しされているのに対し、電気自動車(EV)分野のテスラは中国勢の台頭により厳しい状況に置かれている。そのため「マグニフィセント(素晴らしい、崇高な)という形容詞はふさわしくないのではないか」との声も上がっている(2月12日付ブルームバーグ)。 MAG7の一角が崩れることが契機となって市場全体が軟調になるリスクが生じているのではないだろうか。