欧州のデジタルノマドビザ、難易度で各国を比較 イタリアも参入
イタリアは今月初め、国内で外国人にリモートワークを許可する「デジタルノマド」ビザ(査証)制度を開始した。これにより、欧州連合(EU)の市民権やその他のビザを持たない外国人でも合法的にイタリアに滞在し、長期的に働くことができるようになった。 高収入の外国人労働者を呼び寄せることで経済発展を促すデジタルノマド制度。日本も最近、年収1000万円以上の外国人デジタルノマドに門戸を開いたばかりだ。 だが、デジタルノマドビザを提供する国の中でも、イタリアはビザの取得が容易な国ではない。率直に言うと、申請者は「高度な技能者」でなければならないからだ。これについてイタリア政府は、「自営業者として、あるいは企業の経営者や従業員として、遠隔地で働くことを可能にする技術的手段を活用し、高度な資格を要する労働活動を行う者」と定義している。欧州のニュース専門放送局ユーロニュースによると、この新制度はイタリア入国管理法第27条に基づいて導入された。 イタリアのデジタルノマドビザを取得するには、経済的な障壁もある。申請者は自営業者か企業の給与所得者でなければならず、最低2万8000ユーロ(約460万円)の年収が求められる。注目点としては、これがリモートワークによる収入でなければならないとは法律に規定されていないことだ。つまり、どのような収入源でも、この金額を満たせばよいということになる。 申請者は、就学年数3年以上の大学の学位または専門職資格を保持しているか、特筆すべき経験を証明する文書を提示しなければならない。また、リモートワークを希望する分野ですでに6カ月以上の実務経験があることを証明する必要がある。
タイムアウトがデジタルノマドビザ取得の難易度を基に、EU諸国を格付け
そのほか、イタリア国内での滞在先の確保や医療保険への加入も必要だ。医療保険には個人で加入するほか、保険料年間2000ユーロ(約33万円)の同国の国民健康保険に加入する方法もある。家族の同伴も可能とされているが、判断は地元警察に委ねられている。過去5年間に刑法上の罪で有罪判決を受けている場合は、申請することができない。 申請は、入国前に居住国のイタリア大使館で行う。ビザの有効期限は1年間だが、入国後に更新できる可能性もある。イタリア入国後8日以内に滞在許可を申請しなければならないほか、自営業者は同国の付加価値税(VAT)番号を取得し、税金の納付方法についても把握しておく必要がある。 英誌タイムアウトは、デジタルノマドビザ取得の難易度を基に、EU諸国を格付けした。それによると、申請手続きの容易さで、ルーマニアが1位に選ばれた。同国のデジタルノマドビザはオンラインで申請することができ、当局から回答が届くまでわずか2週間という速さだ。ただし最低3700ユーロ(約61万円)の月収が求められる。 2位はクロアチアで、基準となる最低月収は2539ユーロ(約42万円)。申請時に滞在先も確保しておく必要がある。ランキングの中ほどに位置するスペインは、居住国のスペイン大使館に直接出向いて申請する必要があり、返事を待つのに15~45日程度かかるが、必要な最低月収は2140ユーロ(約35万円)と比較的低い。 地中海に浮かぶ島キプロスは、デジタルノマドビザの取得が最も困難な国の1つだ。求められる最低月収は3500ユーロ(約58万円)で、B型肝炎、C型肝炎、結核、エイズウイルス(HIV)に感染していないことを示す血液検査と胸部X線検査結果の提出も必要だ。申請は同国に入国してから行う。 アンドラ、モンテネグロ、ラトビアも間もなく同様の制度を開始する予定だ。ドイツにはデジタルノマドビザ制度はないが、フリーランスビザ制度がある。有効期限は3カ月で、条件が整えば3年間の滞在許可を得ることができる。
Alex Ledsom