W杯アジア最終予選、日本は全中東組を回避 前回と似た相手と日程…苦い教訓を生かせるか?【コラム】
命運を握る9月連戦を乗り越えても気は抜けない
10月シリーズは前回と全く同じサウジアラビア、オーストラリア2連戦。相手の実力を考えるとここが山場になるのは間違いない。サウジアラビアの会場も過去に何度も試合をしているジッダが有力視されるが、そのアウェームードは凄まじいものがある。前回柴崎がバックパスを拾われ、決勝点を奪われたのも、その雰囲気や気迫に押された部分も少なからずあったはずだ。 そのサウジアラビア戦を勝ち点1以上で乗り切れば、オーストラリア戦もメンタル的に余裕を持って戦える。アジアカップを見ても分かる通り、今のオーストラリアは過去4大会に比べて伍しやすい相手。もちろんミッチェル・デューク(FC町田ゼルビア)やジャクソン・アーバイン(ザンクトパウリ)など長身選手がひしめいているため、空中戦に課題を抱える日本にとっては難敵に他ならないが、締めるべき部分を確実に締め、点を取るべきところで取れれば、勝利できる確率は低くない。 そのうえで、11月のインドネシアと中国のアウェー2連戦に挑むことになるが、ここまで6試合で順調に勝ち点を重ねてトップに立っていれば、2025年の3月と6月のラスト4試合のうち3試合はホームゲーム。しかも3月のバーレーンとサウジアラビアの2連戦は続けて国内。移動を回避できるという意味で、条件的にはかなり有利。前回は残り1試合というタイミングの2022年3月のオーストラリア戦で本大会出場権獲得を決めたが、今回は6月のオーストラリア(アウェー)、インドネシア(ホーム)に行く前に2位以内を確保できるかもしれない。 ただ、それも含めて、全ては序盤の戦い次第。9月シリーズで躓けば、その分、選手たちに重圧がかかるし、日本としても余裕ある戦いができなくなる。前回経験者である遠藤や南野拓実(ASモナコ)、守田、田中碧、板倉、冨安健洋(アーセナル)らはその厳しさを痛感しているはず。それを頭に刻み込んで9月からフルスロットルで走っていくことを考えるべきだ。 アジア枠が8.5に増えたからと言って、最終予選の厳しさは全く変わらない。C組2位以内というハードルを確実に超えてこそ、26年W杯での8強越え、優勝という大目標が見えてくるのだ。 「アジア予選とW杯は別物」という声もあるが、アジアを制することができなければ、世界を制することはできない。そのくらいの強い覚悟を持って、9月の中国戦から全力でぶつかって行くこと。とにかく勝ちにこだわる強い日本代表の雄姿を我々に見せてほしいものである。 [著者プロフィール] 元川悦子(もとかわ・えつこ)/1967年、長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに転身。サッカーの取材を始める。日本代表は97年から本格的に追い始め、練習は非公開でも通って選手のコメントを取り、アウェー戦もほぼ現地取材。ワールドカップは94年アメリカ大会から8回連続で現地へ赴いた。近年はほかのスポーツや経済界などで活躍する人物のドキュメンタリー取材も手掛ける。著書に「僕らがサッカーボーイズだった頃1~4」(カンゼン)など。
元川悦子 / Etsuko Motokawa