岡崎慎司が日本サッカーにもたらしたモノは? その足跡には育成の重要なヒントがちりばめられているはずだ
岡崎は“奇跡”を見せてくれた
日本にもプロの時代が到来すると、Jリーグは全てのクラブに、アカデミーの創設を義務づけた。だが過去30年間の歴史を振り返っても、エリート教育の成果は芳しいとは言い切れない。逆に大成しているのは、ユース昇格を逃したり、大学を経由したり、プロまでの道のりを迂回した選手が多く、「リバウンド・メンタリティ」に注目が集まりようになった。 ただし一方で岡崎からは、屈辱をバネにしたような悲壮感は漂ってこない。むしろ不相応な大望を抱いた少年が、それでも自分を信じてぶれずに走り続けた結果、そこに到達してしまった印象だ。明るく前向きに励む姿は多くの共感を集め、次々に幸運を呼び込むことになったのかもしれない。 また岡崎の足跡には、先人が成功を掴んだエキスが適度に配分されている。例えば中田英をトップレベルに押し上げたのは、早くから未来図を描き、それを迷うことなく実現しようとする早熟の賢さだった。あるいは、中山雅史はペナルティエリア内の動きに焦点を絞り、ワンタッチで決め切ることを徹底追及し、記録破りのゴールを積み重ねた。 夢を描いたら、武器を見つけて、ただひたすらに磨き続ける。その結果、醜いアヒルの子は本当に白鳥に化ける。岡崎はそんな奇跡を見せてくれた。 今では大半の子供たちが園児の頃からボールに触れている。その中から無数の少年たちが「天才」と騒がれエリートコースを邁進するのだが、そのまま別格で居続けられる存在は少ない。 滝川二高で23年間サッカー部の監督を務めた黒田和生氏にとっても、岡崎は「卒業してから最も伸びた」選手だったという。天才の再生は難しい。しかし、岡崎が示した足跡には、育成の重要なヒントがちりばめられているはずだ。 かつて東京ヴェルディで、ユースやトップチームを指揮していた小見幸隆氏が、こんなことを話していた。 「まだボールを蹴り始めて間もない小さな子供のどこを見るか。それは『やりたがり屋』かどうか。そこだけです」 ボールがあれば、がむしゃらに持ちたがったり蹴りたがる。あるいはプールに入れば唇が紫色になっても出てこないし、暗くなっても砂遊びをやめない。 親が心配するようなそういう子どものほうが、将来の伸び率が高いそうである。 取材・文●加部究(スポーツライター)
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