燃料電池車は果たして、カーボンニュートラルの旗手となれるか? ホンダ『CR-V eFCEV』に試乗して考える
(写真:レスポンス)
ホンダが2016年の『クラリティ』以来、8年ぶりに新たな燃料電池車=FCEVモデルとして『CR-V e:FCEV』を公開した。今回、ホンダがメディア向けに開催した試乗会で、実際にステアリングを握り、開発者の話も聞くことができた。FCEVの可能性について改めて考えてみたい。 ◆燃料電池が初めて脚光を浴びたのは1998年だった 日本ではトヨタが『ミライ』と『クラウン』で、FCEVモデルを市場投入している。しかし、ホンダの場合は前回のクラリティも、そして今回のCR-V e:FCEVの場合も、依然としてリースという形をとって、一般的な市場投入はしない。まあ、それなりの理由はあるのだが、インフラの整備が遅々として進まない水素ステーションの現状を考えると、リースという形もやむを得ないかとは思う。 この燃料電池という新たな動力源が脚光を浴びたのは、1998年のことである。ホンダもこの年、初めてFCEVのプロトタイプを発表したのだが、海の向こうはそれこそ蜂の巣をつついたような大波乱となって、ボルボは将来が見通せないことから、フォードとの合併に踏み切り、ドイツのダイムラーは、クライスラーと合併してダイムラー・クライスラーとなるなど、メーカーの合従連衡が起きたのがこの1998年であった。 アメリカではこの年、カリフォルニア・パートナーシップという産学協同のプロジェクトが動き出し、カリフォルニア州サンタバーバラで、燃料電池を核とする大きなイベントが開催された。この時はフォードが作ったモデルと、メルセデスが作ったモデルの試乗が許され、次世代の動力源が燃料電池であることが大きくアピールされた。 その中心にあったのが、燃料電池のスタックを作り上げた、カナダのバラード・パワーシステムズであった。私はフォードの「P2000」と呼ばれたオールアルミ製ボディを持つ燃料電池車と、メルセデスの初代『Aクラス』をベースとした「Ne-Car4」と呼ばれるモデルを試乗した。メルセデスの場合は今の水素タンクとは異なる液体水素タンクを用いたものであった。この時はまさに次世代は燃料電池一色になると錯覚したものであるが、その後の経緯を見ると、如何にこのシステムが達成困難であったかがわかる。 ◆FCVでありEVでもある、『CR-V e:FCEV』の個性 さて、最新のCR-V e:FCEVの特徴は、燃料電池一択ではなく、実はEVと組み合わせているところにある。つまり、水素ステーションが自宅の近隣にあって、すぐに水素が充填できる環境にある人なら、燃料電池一択でもさほど大きな問題はないのかもしれないが、都会ならともかく、地方に行くとまだ水素ステーションのスタンドすらない県もあるという。古いデータで恐縮だが、全国の水素ステーションの数は2022年5月現在で159か所。このうちの59か所が首都圏に存在するそうで、こうなると燃料電池一択でこのシステムを訴求するには現状では難しいことがよくわかる。 そこでホンダは17kwhのバッテリーを搭載し、最大61kmの電動走行を可能とした。この電動走行の間に水素ステーションがあれば、そこで水素を充填してさらに600km以上の走行が可能になるという。それだけではなく、V2Hは当然として、大出力の給電も可能にしているなど、自動車としてのみならず外部電力としての可能性をさらに広げていることもこのクルマの特徴の一つだろう。 試乗会の折、ホンダの先進パワーユニット・エネルギー研究所 エネルギーユニット開発室第2ブロック アシスタントチーフエンジニアの菊池剛氏にお話を伺うことができた。こちらから質問したのは、「何故まだリースなのか」ということと、「なぜ今、ある意味かなり唐突にFCEVが出てきたのか」ということ。つまりEVではGMがアルティウムバッテリー&プラットフォームを使ったクルマのホンダとの共同開発が中止になったタイミングの後だったために、近視眼的にFCEVにシフトしたとも見られたからである。 菊池氏曰く、確かにタイミング的にはそう見えてしまうかもしれないが、FCEVの開発はすでに四半世紀を超えて行っていて、コロナなどの影響も受けて少し発表が遅れたが、基本的には既定路線であること。リースに関しては現場的にはすでに市販してもOKなのだが、首脳陣の最終判断がそうなったという回答を得た。やはり廃棄されたクルマの行き先など、解決すべき課題はまだ残っているとのことで、今回新たなお話として聞けたことは、自動車に限らず、定置型のFCスタックなどの開発も行っているとのことだった。 ◆量産のノウハウも手に入れたホンダFCEVの走り
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レスポンス 中村 孝仁