「まちの寄合所を残したい」 秋田市で閉業店を「地域居酒屋」に 田口将隆さん(44) 令和人国記
本業の勤め先は人手不足もあって土日出勤も珍しくない。一息つこうと勤め帰りに店に寄っても、混んでいれば作業着に前掛けをして手伝い、飲むのは一段落してから。もちろん代金はきちんと払っています。
客としての思いから、メニューは前の店より価格を抑えめにし、例えばワラビおひたし350円、ホルモン煮込み400円など、手ごろなつまみを増やしたことも喜ばれています
開店1年余で収支はトントン。赤字の月は自分の給料から補填する。それでも人件費と食材費はケチらない。接客や料理という〝店の顔〟に直結するから。本当は利益が少し出るといいけれど、不思議とトントンでもけっこう続けられるものですね。それより何より、地元の人がみな喜ぶ姿を見られれば満足。
■地方の先例にも
秋田市は昨秋に人口が30万人を割るなど、人口減少時代の特に地方では、客足が減ってのれんを下ろす居酒屋が少なくない。
大都市で高齢の主人に代わって常連客が店を継ぐ話はよく聞きますが、地方は経営難が先に立つ。
そんな店を引き継いだのは無謀といわれるかもしれないが、住民同士が顔と顔を突き合わせ、酒を飲むことで本音をさらけ出しながら、地域のいろいろなことを語り合える〝寄合所〟としての居酒屋は、やはり欠かせない存在だと思うんですよ。
地方で居酒屋を維持するパイロットケースにもなるんじゃないかと、われながら思っています。
そのためにも、さらに一層地元の人の利用を増やし、経営も安定させることが目下の目標。将来、勤めをリタイアする年齢になったら、この店を専業でのんびりやってもいいかな…。
(聞き手 八並朋昌)
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たぐち・まさたか 昭和54年、秋田市生まれ。泉小、泉中卒。秋田経法大付属高(現ノースアジア大明桜高)進学後、アルバイト先の給油所で評価されて高給となり、卒業後もそのまま勤務後、現在の設備会社に転職した。「喰い処 旬」(018・838・0134、同市泉中央2の8の9)はランチが平日午前11時~午後2時。夜は午後6~11時(無休)。