<カープ若手育成論>「育成のカープ」を支える大野寮。若鯉を導くレジェンド捕手・道原裕幸寮長が語る印象的な選手たち
ドラフトでカープに指名された選手たちが、まず入寮するのが二軍選手たちが生活する「大野寮」だ。現役時代は捕手として黄金時代のカープを支え、長年大野寮で寮長を務める道原氏が、特に印象に残った選手の姿を振り返る。(全2回・第2回) 【写真】石原慶幸コーチから指導を受ける坂倉将吾 ◆「私が経験し、成功した選手たちの行動を彼らに伝えるように心がけています」 寮生の姿で印象的なのは鈴木誠也(現カブス)でしたが、菊池涼介も印象的です。彼は2012年に入寮してきましたが、初日から新人選手の先頭に立って室内練習場でバッティング練習をしていました。 このように、成功している選手に共通しているのは、個人練習をいかにやっているか? だと思っています。ですので寮の選手たちには、全体練習のあとの個人練習の大切さを必ず伝えるようにしています。 生活面で印象的な選手が坂倉将吾です。彼はプロ1年目から、朝起きてきたら朝食前に必ず30分程度散歩していました。練習も良くやっていましたが、なかなか高卒1年目からこのような自分のルーティンを持っていて、自己管理ができている選手も珍しかったです。あとは栗林良吏です。彼は大野寮にいた期間は短かったですが、トイレのスリッパを必ずきちんと揃えるなど、そういった細かな面の気遣いができる選手でした。私が「ありがとう」と言うと「社会人の頃から鍛えられていますから」と頼もしい返答が返ってきました。プレーの実力はみなさん周知の通りですが、普段の生活において何も言うことはない、素晴らしい選手です。彼はサインにも「謙虚」と書いていましたが、その通りだなと思います(笑)。 もう1つ、プロ野球選手として成功している選手の共通点はよく食べること。過去見てきた選手も食べる選手は活躍しています。丸佳浩(現巨人)、前田健太(現タイガース)は、見ていてすごいなと思うくらい食べていて印象に残っています。現在の選手で言うと、今年育成ドラフトで入団してきた佐藤啓介です(6月7日に支配下登録選手契約)。彼は朝からゆっくり時間をかけて沢山食べていて、その量はすごいです。 やはりプロ野球選手は体が資本ですし、体力勝負です。よく食べる選手たちが活躍する姿を見てきているだけに寮の選手たちには「朝食だけは絶対に食べなさい」と厳しく指導しています。 寮の選手からすれば、私は選手たちの親よりも年上だと思いますが、子どもを見るような感覚です。年齢が離れているので、普段は今の時代にあった言葉遣いで会話をするように気をつけています。昔はキツい言い方だったかもしれませんが、昔と同じ言い方をしていては通用しません。選手たちは私の話を聞いてくれていますが、過去を振り返ると、伸びる選手は素直です。これも活躍した選手に共通して言えることかもしれません。 寮で生活する二軍選手の目標は一軍で活躍することです。プロ野球の一軍で活躍すれば待遇も違いますし、稼ぐことができる。夢がある世界です。私も75歳になりましたが、この年齢までカープに携わることができて本当にありがたい限りです。体力が続く限り、自分の経験を二軍で頑張っている選手たちに、いろいろな形で伝えていきたいと思っています。 ◆道原裕幸(みちはら・ひろゆき) 1949年5月30日生、山口県出身。 桜ケ丘高_芝浦工大_広島(1971年ドラフト1位-1984年引退)。現役時代は捕手として1975年の初優勝に貢献し、黄金時代の投手陣を支えた。現役引退後はコーチに就任し、2010年まで若手指導に尽力。2011年から大野寮寮長を務めている。
広島アスリートマガジン編集部