先行きは上振れリスクが再度高まる国内物価(3月CPI):円安進行は日銀の追加利上げを促す
コアCPIは7月に一時3%台に乗せるか
このように3月までの消費者物価上昇率のトレンドは、着実に低下してきているが、今年5月以降は、コアCPIの上昇率は高まることになる点に留意しておきたい。まず5月には、家計の電気料金に上乗せされる再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)が引き上げられる。 2023年度(2023年5月~2024年4月)の再エネ賦課金単価は「1.40円」だったが、2024年度は「3.49円」と大幅に増加する。これは、5月のコアCPIを0.25%程度押し上げると試算される。 さらに政府は、昨年1月に導入した電気・都市ガス料金への補助金制度、「電気・ガス価格激変緩和対策事業」を、今年5月使用分までで終了させるとみられる。これは、5月使用分が反映される6月全国消費者物価を前月比0.25%ポイント、6月使用分が反映される7月全国消費者物価を前月比0.25%ポイント、合計で0.49%ポイント押し上げる。 ちなみに、電気・都市ガス料金への補助金が終了すれば、2人以上世帯では、電気料金の支払いは年間17,696円(月間1,475円)、都市ガスは年間5,461円(月間455円)増加する計算だ。また、補助金終了による経済への影響を考えると、個人消費は1年間の累積効果で0.25%、GDPは0.09%それぞれ押し下げられると試算される(内閣府、短期日本経済計量モデル・2022年版に基づく)(コラム「政府の電気・ガス支援策は5月までで終了へ:ガソリン補助金は延長と対応が分かれる」、2024年3月28日)。 これらの措置の影響で、全国コアCPIの前年比上昇率は今年5月、6月、7月の3か月間に毎月+0.25%程度ずつ、前月比及び前年同月比で押し上げられる。その結果、7月のコアCPIは+3.0%と一時的に3%台に乗せる見通しだ。 その後のコアCPI上昇率は再び低下傾向を辿ると見ておきたいが、2%を割り込むと見込まれる時期は、補助金終了などの影響により、従来見通しの2024年年末から、2025年年央へと後ずれすると予想する。その後は、物価上昇率は低下基調を辿り、2026年年末までに1%を割り込むと見ておきたい。2024年度のコアCPIは+2.6%と3年連続で2%を超えるが、2025年度には+1.5%、2026年度には+0.9%と次第に低下していき、日本銀行の2%の物価目標は持続的には達成されない見通しだ(図表1)。