大学入試「関係人口」「地域づくり」の出題相次ぐ 農山村の価値気付くきっかけに
共通テストにも登場
受験シーズンが終盤を迎える中、本年度の大学入試で「地域づくり」に関する問題が複数出たことが分かった。大学入学共通テストでは本年度初めて、多様な形で地域と関わりを深めていく「関係人口」などについて出題された。専門家は「地域の課題はそこに住む人だけの問題ではない。日本全体で考えていく必要があることが反映された試験だ」と分析する。 今年1月13、14日に行われた共通テストは全国で約46万人が受けた。そのうち、「関係人口」について出題された「現代社会」を受験したのは16%に当たる7万1988人。問題は、地方都市に住む学生が人口減少で地域社会の維持が難しくなる恐れがあると考え、地域づくりに関心を持つという場面から始まる。その中で「関係人口」が地域にもたらす効果①地域資源の再発見②専門的な能力の移転③地域社会の運営体制の変化――に注目し、その具体例を選ぶ問題などが出た。 また、「地理B」では登場人物が島根県浜田市での地域調査を通じ、同市の過疎問題や各集落の協働活動を支えるまちづくりセンターを知ったという場面設定で、問題が出た。
国立2次試験では市民農園
共通テストとの合計得点で合否が決まる国公立大学の2次試験でも、地域づくりや農業をテーマに出題した大学がある。 名古屋大学の「地理」では、都市部に残る農地を市民農園として貸し出す理由や、担い手不足など地域活性化へ向けてどのような対策が取られているかが問われた。 大手予備校、東進ハイスクールの解説では、理由については「都市住民の農業を体験する需要が生まれたことや急速な都市化により癒やしの空間が求められている」と説明。対策については、地域おこし協力隊の活動や、道の駅で特産品を販売しにぎわいを生み出すことなどを挙げた。 東進ハイスクールは「新聞を日常的に読み、目にして、実社会への関心と感覚を養う必要がある」と受験生にアドバイスした。
新たな価値に気付いて
島根県立大学地域政策学部で地域づくりコースを担当する豊田知世准教授は「若者は、お金では換算できない農山村の文化や暮らしに新たな価値を見いだしている。受験生が今後、過去問という形で学ぶ中で農山村の価値に気づくきっかけになれば良い」と話す。
日本農業新聞