「渋滞解消の切り札」のはずが事故の原因に!昔は全国に普及→今はお払い箱の「残念な仕組み」とは?
● リバーシブルレーンの運用を支えてきた 「部品」も入手不可能に リバーシブルレーンが減っている他の理由としては、冒頭で述べたように道路が整備されたことが挙げられます。交通の流れが変わったため、渋滞対策が不要になったのです。 例えば、2024年度をめどに廃止する方針が決まった静岡市では、導入当初の1978年は国道1号を利用して周辺地域から静岡市中心部へ向かうクルマが増え、渋滞が恒常的に発生していました。ですが、国道1号にバイパスが整備されたことでクルマが分散され、交通量は1985年をピークに減少。2020年の交通量はピーク時の57%にまで低下したそうです。 追い打ちをかけるように、リバーシブルレーン導入から45年以上が経過したことでシステムの故障やエラーも増え、システムの部品も製造されなくなりました。これ以上の継続は物理的にも難しいことから、静岡市では今回の判断に至ったといいます。 ちなみに、国道1号のリバーシブルレーンでは、2020年~2023年の4年間で86件の人身事故が起きたとのことです。 このようなことから、リバーシブルレーンは全国的に「お払い箱」になりつつあります。静岡県道路交通環境安全推進連絡会議の資料によると、東北地方、関東地方、中部地方などでも、計10カ所以上で廃止の検討が進んでいるといいます。ただし、「バス専用レーン」を確保するためにリバーシブルレーンを設けている区域では、バス会社の反対を受け、廃止できずに運用を続けているケースもあるようです。 とはいえ、長期的な視点で見ると、リバーシブルレーンがさらに淘汰されていくことは間違いありません。一般道では警視庁が「AI(人工知能)を活用した信号制御」を取り入れ、交通量に応じて青信号の点灯時間を調整する渋滞対策も始まっているので、今後はそうした先進的な取り組みへと切り替わっていくでしょう。
吉川賢一