TVアニメ『アークナイツ』、ドクターの目が中心にきていない描写や回想シーンをあえて入れなかった理由とは? アニメプロデューサーと監督が語る制作秘話
Hypergryph(ハイパーグリフ)が開発し、日本語版はYostarが運営・配信を行っているスマートフォン向けゲーム『アークナイツ』。本作のTVアニメが2クールに渡り放送された。基本的にゲームのストーリーに沿った内容で、全16話で構成されたTVアニメシリーズ。どのような点にこだわって制作されたのか。今回は、渡邉祐記監督とアニメプロデューサーを務めた畑岳央氏にインタビュー。放送後の今だから話せる制作秘話をお聞きしました。 【場面写真】目覚めたばかりのドクターの目のアップ
◆最初に、ゲーム『アークナイツ』への印象についてお伺いできればと思います。 畑:“世界観が広げられる”作品だと思います。アニメで描いているシーンは『アークナイツ』の世界で起きている一部の出来事ではあるのですが、ストーリーや細かい設定から、それ以外にもあの世界ではいろいろなことが起きているということをイメージできるんですよね。渡邉さんはどうでしょう? 渡邉:いろいろなところでお話していますが、重たいというか、すごくシリアスな世界観になっていて、リアリティレベルが高い作品だと思います。ソーシャルゲームはキャラクターの魅力でゲームを好きになっていただく場合が多いと思いますが、『アークナイツ』に関してはキャラクターよりも世界観が作品の軸になっていて。もちろんビジュアルもカッコいい・かわいいキャラクターばかりですが、それ以上にどうやってキャラクターが世界に関わっているのかによって魅力が生まれているというのが、少し特殊だと感じています。 ◆リアリティレベルの高さは、TVアニメでも意識されていましたか? 畑:意識していました。現実世界には「どうでもいい人」なんていないじゃないですか。だから本作においても、例え物語に深く関わってこないキャラクターがいたとしても、「どうでもいい人」として描いてしまうと、リアリティレベルが下がってしまうと思って。その例のひとつとして、ドクターら主人公が所属する「ロドス・アイランド製薬」と対立する組織「レユニオン・ムーブメント」の一般兵の描き方があります。作中でしばしばフォーカスがあたるキャラクターと対等とまでは言えないまでも、差別化するのではなく、あくまで同じ世界に生きる人たちという点を重視していました。 渡邉:ゲームでも「一人ひとりにちゃんと命がある」ということを大事にしていたので、特にSeason2はそれを主題のひとつにしていました。また、キャラクターが死んでしまうショッキングな展開が多い作品ですが、その事実だけに留まらないようになっていて。むしろそのキャラクターが死んだことで周りがどういう影響を受けたのか、その先はどうしたのかということに重きを置いていると、原作ゲームのシナリオから感じました。 ◆Season2ではスノーデビル小隊をはじめ、「レユニオン」側に所属するキャラクターたちの視点にもフォーカスされていました。そのなかで、決して勧善懲悪ではないということが伝わる物語が展開されていたようにも感じています。 畑:本作はドキュメントに近い構成だと思っていて。正義と悪の概念というものをぜんぶ剥ぎ取って、まっさらにしたうえでただ事実の積み重ねで淡々と物語が進んでいくんです。そのなかで正義か悪かを判断するのは、視聴者のみなさん。決して押し付けるのではなく、視聴者のみなさんが自身と照らし合わせてキャラクターたちの心情と共有・共感できるような作品にしたいなという考えが私のなかにはありました。そのキャラクターがつらいから「つらそう」ではなくて、一緒になって「つらいよね、大変だよね」と思える共感作用が、この作品の感動ポイントであり、重ねての言葉になりますが、リアリティの高さにも繋がっていると思っています。 渡邉:共感作用という点で言えば、今回アニメ化するにあたって「『アークナイツ』の世界に視聴者が一緒にいるような感覚になる作品づくり」を意識していました。例えばテロップ。演出的に必要なところ以外は一切排除しています。そのときの出来事が何時・何分のことなのかという表示もしていません。回想シーンも本当に必要な場合以外は排除していますね。回想を入れて「このシーンはあのときのことと関連している」と強制的に思い起こしてもらうのではなく、視聴者の方が「あのシーンと関係しているかも」と振り返ってもらうのがリアリティにも繋がるはずと思い、あえてそういう作り方にしました。 ◆なるほど。 渡邉:ただ、この作り方の副作用として、今誰がどこにいるのかという説明や補足を省いちゃうので、分かりづらくなってしまったかなと。じっくり見て考えてもらう作り方なので、「ながら見」には向いていない作品になっていると思います。 ◆ある意味、見返す前提で作っているところもある? 渡邉:もちろんテレビ放送されることも念頭には置いていますが、地続きで見ることを想定して作ってはいました。Season2のスタートでSeason1の振り返りなどを一切入れていないのも、そういった地続きで見てもらうことを想定していたためです。 ◆見返すことでの気づきもある気がします。例えばメフィストとファウストの関係。戦いをゲームのように楽しんでいる残忍なメフィストと、冷静沈着なファウストが一緒にいる理由が分かりませんでしたが、Season2の物語を経て、ファウストにとってメフィストは唯一の存在だったのかなと思えるようにもなって。 渡邉:あのふたりは共依存の関係にありますからね。いつの間にかお互いに「いなきゃ」というよりも「いるからこそ」の存在になってしまっていたのかも。Season1の2話でのメフィストの言動はひどいものですが、改めて物語のなかでファウストがどう受け答えしていたのかという点やメフィストの過去を知ると、彼らの見え方も少し変わってくると思います。
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