インドやタイの中間層を狙え 製造業からサービス・小売りへシフト 谷道健太/和田肇・編集部
◇「ココイチ」は日本食 「カレーハウスCoCo壱番屋」で知られる壱番屋は20年、三井物産と合弁で首都ニューデリーに隣接するハリヤナ州グルグラムに1号店をオープン。22年に2号店、23年に3号店を出店した。いうまでもなく日本のカレーライスの源流はインド料理だ。両者は食材や味、作り方がかなり異なる料理であり、壱番屋は「ジャパニーズカレー、つまり日本食の一種としてのカレーを展開する」(広報室)。インドでは外国料理を扱う飲食店は一般的ではなく、庶民の間で日本食が知られているとはいい難い。ただし、日本ブランドの評価は高い。そこで、「現地の味に合わせるのではなく、日本の店と同じ味にして、まずは日本のカレー、日本食として楽しんでもらう」(同)ことに力を入れているという。 米飯以外に、小麦粉を水で溶いて味を加えて薄焼きにしたパラタが付く食事を用意し、肉料理を作る厨房(ちゅうぼう)と菜食の厨房を完全に分けるといった現地の風習に合わせているという。同社によると「当初は駐在員などの日本人が客の7割を占めたが、今は7割が現地の人たち」。 ◇インドで信州そば発売 長野市に本社がある柄木田製粉は7月、インド企業を通じて信州そばの乾麺を売り始める。日本のそばにはパスタや中華麺とは違う食感と風味があると知ったインド企業が、サラダ用の食材として現地で販売したいと打診した。柄木田製粉も乾麺の輸出を模索していたことから話がまとまった。 国際糖尿病連合(IDF)の21年報告書によれば、インドの20~79歳人口に占める糖尿病患者の比率は9.6%に上り、世界5位だった。近年は健康志向が高まっているという。同社の柄木田豊社長は「そばをヘルシーな食材と捉え、サラダの具材として着目したようだ」と語る。ゆでて冷やした信州そばを他の野菜と盛り付け、塩味のあるドレッシングやスパイスをかけて食べることを想定しているという。 10年ほど前まではもっぱら日本人がインドや東南アジアの名所を巡って豪遊していた。今は日本の小売業、外食業、宿泊業はそれらの国から来た観光客の消費に依存する。日本の製造業に続いてサービス業も、インドや東南アジアに進出してビジネスを拡大する時代になったのだ。
(谷道健太〈たにみち・けんた〉編集部) (和田肇〈わだ・はじめ〉編集部) 明日7月1日(月)発売の週刊エコノミスト7月9日号では、「沸騰! インド・東南アジア」と題して、経済成長の著しいインドや東南アジアの最新事情を特集します。巨大な人口を抱えるインドやASEAN諸国は、成長機会を探す日本企業にとっては非常に重要なマーケットとなっています。経済だけでなく、民主化の度合いなど、各国の政治の動きも追いました。ぜひ、書店やオンラインでお買い求めください。