DMG森精機のロシア子会社「強制収用」までの顛末、「戦争支援企業」を全否定、工作機械18台はどこへ
ロシア軍が2022年2月24日にウクライナへ攻め入った後、DMG森精機は3月3日付で「ロシア事業の影響について」と題する文書を公表した。2021年度にロシアで販売した工作機械の約60%が現地生産、残りは日本や欧州からの輸入品だったという。 さらに「20台強のロシアのお客さま向けの受注残を抱えているが、その出荷を停止した。ウリヤノフスクの組立工場での生産も中止した」と明言。5月には現地の従業員約270人を解雇し、ロシアから事実上撤退した。
当時の報道によると、現地会社には少数の社員が残り、顧客のアフターサービスなどのみに従事していたはずだった。しかし2023年9月20日、ウクライナの国家汚職防止庁(NACP)が、次のような文章を発表した。 ■ウクライナ政府の認定 「DMG MORIはロシア市場の積極的な参加者であり続けており、これは公式声明と矛盾」「ロシアとの協力を続け、軍事力を支援している」 そしてNACPは、DMG森精機のドイツ子会社を国際戦争支援企業のリストに追加すると宣言した。同リストには日本たばこ産業の海外子会社JTIも掲載されていた。ウクライナ政府は他国からの抗議を受け、このリストは削除済みだ。
メディアが「戦争支援」認定を報道すると、DMG森精機は2023年9月29日に1本目の声明文を出した。一部を以下に引用する。 「DMG MORIは、2022年3月に当社ホームページにリリースの通りロシアでの生産・販売・サービスを停止しております。また、今日に至るまで、DMG MORIはこの宣言を遵守しています。 現在、DMG MORIがこの宣言を反故にしたかのような印象が持たれているようですが、そのような批判は完全な誤りであり、全てを否定します」
文中には、事実関係を調査する旨も記されていた。一方、NACPは同日、ホームページ上に続報を掲載。そこでは「(DMG森精機側が)2022年後半だけで、1600万ドル相当の商品とサービスをロシアで販売し、2023年の最初の3カ月でさらに200万ドルの利益を上げた」と述べられていた。 約1カ月後の10月25日、DMG森精機は「ロシアに関するステートメント」と題して、ロシア事業に関する調査結果を公表。ウクライナへの侵攻後、ロシアへ販売されたり、持ち込まれたりした機械は1台もないと改めて強調した。