寺の住職がびっくりした「数百年後の恩返し」 床が抜けそうな貧乏寺の改築費用を寄付したのは、まさかの「潜伏キリシタン」の子孫だった 寛容さが現代社会に投げかけるもの
外海潜伏キリシタン文化資料館の松川隆治館長によると、浦上の信徒は天福寺に直接持って行ったわけではなく、樫山地区の潜伏キリシタンに預けた。このキリシタンは捕縛されたが、像を預かったことを最後まで否定し、牢屋で亡くなった。 ▽対立と分断が進む世界との大きな違い 塩屋さんは、口を割らなかったのは天福寺を守ろうとしたからだと考える。権力者の迫害から、お寺とキリシタンが協力してお互いを守った歴史がある。 「互いを認め合う日本人の宗教観や自然観が成した業だと思う。寛容の精神がなければ250年間も『潜伏』なんてできない」 お寺の歴史を振り返ると、現在の国際社会に深い懸念を感じるという。米中両国の覇権争いやウクライナ危機、イスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘…。対立と分断が進み、他者への寛容性を失っているように見えるからだ。 「例え『正義の戦い』であっても、してはいけない。いったん戦うとお互いが『聖戦』を叫び、それぞれの一番弱い人たちが犠牲になる。どんなにつらくてもお互い厳しい節制をして非戦の覚悟を決めるのが、政治であり外交力だと思う」