小池知事の市場移転方針「素直に受け取れない状態」築地業者に戸惑いの声も
豊洲市場への築地市場の移転問題をめぐり、東京都の小池百合子知事は22日、築地市場(東京都中央区)を訪れ、同市場の業界6団体の代表に市場移転の基本方針を説明した。豊洲に移転した上での築地との両立案に対し、歓迎する声の一方で、豊洲移転反対派が多い団体からは率直に戸惑いの声が聞かれた。 【中継録画】小池知事が築地市場の業界団体代表と会談 移転方針を説明
豊洲移転は「安全宣言が最低条件」
17日の「豊洲市場の無害化未達成」に対する謝罪以来に築地市場を訪問した小池知事は、豊洲市場に中央卸売市場を移転し、築地市場の跡地は売却せずに5年後をめどに再開発するプランを説明し、理解を求めた。 この基本方針に対して、東京都水産物卸売業者協会の伊藤裕康会長は「豊洲への移転をはっきりお決めになった」と歓迎の意を表したが、水産仲卸事業者で構成する東京魚市場卸協同組合の早山(はやま)豊理事長は「組合員はまだ素直に受け取れている状態にない」と、豊洲移転反対派が多い組合員の戸惑いを代弁。全組合員を対象に市場移転方針の詳細な説明を求め、その上で組合としての総意を示すとした。豊洲移転は「(追加の土壌汚染対策の)機能が確認された上で、都知事の安全宣言をいただくことが最低条件」と訴えた。 市場業者からは風評被害対策と「安全宣言」を求める声が多く出た。小池知事は、専門家会議が提示した追加の土壌汚染対策と徹底した情報公開を行い、「自ら先頭に立って豊洲の安全性をしっかり伝えていく」と表明。築地市場青果連合事業協会の泉未紀夫会長はこの姿勢を評価した上で、「都民は市場で地下水を使わないことを意外と知らない。知事自らの口で言ってもらうのが一番早い」と注文した。 一方、再開発する築地跡地にも市場機能を持たせるという「豊洲・築地市場の両立」については、伊藤会長が「市場は物と人、情報が集まり、その交流の中で運営されるもの。これだけの近距離で2つ市場というのはあり得ない」とあらためて異論を述べた。小池知事は「豊洲は成田空港や羽田空港に近く、築地は銀座に近い。それぞれの特徴を生かせば共存は可能」として、「それぞれの市場のニーズは異なる」との考えを示した。 豊洲移転時期が「最短で来年5月」とする報道などが出るなど、マスコミ報道が先行する状況に対して「われわれは後から知って疑心暗鬼になる」との苦言もあった。 この日の会談にはほかに、東京魚市場買参協同組合の大川三敏理事長、東京魚商業協同組合の渡邊一夫理事長、築地市場関連事業者等協議会の大野精次会長も出席した。 (取材・文:具志堅浩二)