海の宝石アコヤ真珠、世界で人気 日本産は驚きの値上がり
贅を極めたジュエリー最前線(2)
海の宝石、アコヤ真珠が世界から注目を浴び続ける理由を探った。 宝石の値段が下がるということは、長期的に見ればほとんどないが、日本産の真珠はここ3年で2倍もの値上がりだ。長年真珠養殖に携わってきた業者も経験したことのない高騰だと語る。 【写真はこちら】ダイヤやエメラルドと真珠の相乗効果がまぶしい! 3ブランドの逸品をチェック 理由の一つは、中国の旺盛な真珠購買だ。習近平国家主席の妻、彭麗媛夫人が真珠を好んで身につけて人前に姿を現すことから人気に火がついたといわれる。真珠は日本の「水産物」ではあるが、福島第一原発の処理水放出を受けて中国政府が発した輸入全面停止措置の影響は受けていない。食品のみを禁輸としている香港を通じ、ジュエリーに加工されてから大陸に渡るからだ。 もう一つの大きな理由は、真珠を生み出すアコヤガイの大量斃死だ。2019年から国内の主要な産地でアコヤガイの稚貝の多くが死んでしまい、減産がずっと続いているのだ。原因はウイルスや海水温の上昇などの複合的なものだというが、決定的な対応策はまだ見つかっていない。 アコヤ真珠の産出が劇的に減り、卸業者がとっておきを「蔵出し」することでこれまでは何とか流通量が保たれてきたが、そろそろ在庫も底をつく。それでも日本産アコヤ真珠の人気が衰えないのは、何といってもその質の高さ、照り映えるような艶の美しさに理由がある。20世紀初頭に日本が世界で初めて真円真珠の養殖に成功して以来、蓄積された多くの経験や知識が、日本産アコヤ真珠を世界に誇れる宝石にしている。 取材・文/本間恵子 編集協力/オフィス インターフェイス デザイン/高井真由美 [THE NIKKEI MAGAZINE LUXE 2023年11月3日号の記事を再構成]