「のり漁師」のピアニスト・徳永義昭さん、明日から東京公演 フジコ・へミングさんに捧ぐ「ラ・カンパネラ」
佐賀市でのり漁師をしながら、ピアニストの顔を持つ徳永義昭さんが、27日から5日間(31日まで、計8回)、東京・六本木のトリコロールシアター・ホワイエでリサイタルを行う。 4月に旅立った世界的ピアニストのフジコ・へミングさん(享年92)の「ラ・カンパネラ」に衝撃を受け、52歳でピアノをスタート。奥さんが、もともとピアノを教えていたことも幸運だった。 「それまで妻のピアノにも関心なかったのですが、心揺さぶられた曲を自分で弾いてみたい、その一心で。1日に8~10時間、練習しても飽きません。繊細さや地道で根気が必要という点では、のり漁とピアノは似ているのかもしれません」 へミングさんと奇跡的に対面することもできた。「徳永さん、あなた自身が音に出ている」そう言われた。最大の賛辞だろう。そして前座を務める機会を得た。鍵盤を弾くのは指だ。しかし、指の動きがたどたどしくても、奏者を激しく突き動かす内面が何より大事であることを、証明してみせた。 人生を変えた恩人は、もうこの世にいない。ヘミングさんはこうも徳永さんに言った。「練習するときは精神統一をして。あまり深く感情を込めないで。さらりと弾いた方がいいわよ」と。この言葉を大事に、反すうする日々という。今回のリサイタルでは「Forever Love」「ひまわり」「ラ・カンパネラ」を披露。ヘミングさんに捧げるつもりだ。 「六本木という場所で演奏できることをうれしく思います。本業はあくまでのり漁で、それが変わることはありません。でもいつどこで、何がきっかけで人生が変わるか分からない。譜面やピアノの専門的なことはいまもよく分かりません。そんな私に少しだけ興味を持ってピアノを聴きにきてくだされば光栄です」と話している。
報知新聞社