中国で大人気の「ウルトラマン」 トレカ長者企業あらわる
中国で今なぜか、ウルトラマンが大人気だそう。「帰ってきた」ウルトラマンブームは、日中にとんでもない額の経済効果ももたらしている。 60年近く放送が続く特撮テレビドラマ「ウルトラシリーズ」(以下ウルトラマン)が、中国で爆発的人気を集めている。ウルトラマンのテーマ館やホテルが相次ぎオープンし、中国企業がライセンスを得て販売している収集・交換して楽しむトレーディングカード(トレカ)は、シリーズ製作元の円谷プロダクションに巨大な収益をもたらすようになった。
テーマ館やホテルが続々開業
中国でウルトラマンの番組が初めて放送されたのは1993年。以降、テレビやインターネット配信で断続的に作品が放送されてきたが、社会現象になるほど人気が出たのは2019年ごろだ。 アリババグループのECサイト「タオバオ(淘宝)」は2020年に「ウルトラマン」の検索が2億7000万回に達したと公表した。中国版TikTokの抖音(Douyin)、写真投稿SNSの小紅書(RED)にもウルトラマン関連の投稿があふれ、中国国営テレビ局の中央電視台(CCTV)は2020年の話題の人物にウルトラマンを選んだ。 中国での放送開始から30年が経過し、親子2世代でのファンも多い。2022年から2023年にかけて上海市、大連市(遼寧省)、成都市(四川省)の3カ所で、店舗やレストランから構成されるウルトラマンのテーマ館がオープンした。同年には上海にウルトラマンをテーマにしたホテルが開業した。他にも各地でウルトラマンのイベントが開かれ、主役を演じた俳優はゲストとして引っ張りだこだ。
トレカ販売企業がIPO
そのウルトラマンを活用して大成功した企業として知られるのが、卡遊(Kayou)だ。卡は中国語で「カード」の意味を持つ。同社は2010年代前半にカードの製造販売に参入したものの、有力なIP(知的財産)を持っていなかったことや、カード市場が未成熟だったことから苦戦が続いた。しかし2018年にウルトラマンのライセンスを獲得し、トレカの販売を始めると、直後に前述の大ブームが起きたことも追い風に一気に波に乗った。今では「名探偵コナン」など多くのIPを抱え、トレカや文房具を製造販売している。 卡遊は今年1月26日、香港証券取引所に株式公開(IPO)を申請した。目論見書によると、同社の売上高は2021年が22億9800万元(約480億円)、2022年は41億3100万元(約860億円)、2023年1~9月は19億5200万元(約400億円)だった。ウルトラマン関連カードの売り上げは、同社が扱う全IPで売り上げ2位の「斗羅大陸~7つの光と武魂の謎」の10倍に達する。また、同社の売上高の9割以上がトレーディングカードの販売からもたらされており、売上高利益率は2021年以降59・5%、69・9%、71・2%(2023年1~9月)とエンタメ・娯楽業界の中ではきわめて高い。 ウルトラマンのトレカがこれほど人気なのは、キャラクターの魅力に加え、コレクション欲をかきたてること、そして二次流通市場が確立されていることがある。トレカの1パック価格は9・9元(約210円)から100元(約2100円)超まで数種類、1パックに複数のカードがランダムに入っている。カードはSSR、PR、SR、Rなどの30以上のグレードがあり、希少性の高いカードは1万元(約21万円)以上で取引されるなど高い価値を持つ。 小学校近くの文房具屋からオンラインコミュニティまで全国の隅々まで販路があり、子どもたちの社交ツールとしての地位も固め、持っていないと話題に入れないし、レアカードを所有していることがステータスになっているのだ。