「死を覚悟した手術も経て」夫を残し子連れ上京、落語の道を目指すも 三遊亭あら馬「弟子入り断られ」
── それは思いきった行動ですね。ご家族の反応はいかがでしたか? あら馬さん:よく「反対されなかったんですか?」と聞かれるんですが、実は夫にはほとんど相談してないんです(笑)。私は昔から、やると決めたら即行動するタイプ。夫も私の性格をよく理解しているからか、特に何も言いませんでしたね。子どもが小学校に上がる前に新しい環境でスタートを切りたいという思いもあって、私のなかでは自然な流れだったんです。
それと、ちょうどそのころ、父が亡くなって。父は生前「いつかお前にマンションを買ってやる」と言ってくれていたんです。その父との約束を果たす形で、 父の遺産で東京に土地を購入。3階建ての家を建て、そこで新しい生活を始めました。
■託児所を使い、落語教室に3年通うも弟子入りを断られ ── 東京に戻られてから、落語との出会いはどのようなものだったのでしょうか? あら馬さん:東京に戻ってきてから、アナウンサーを目指していた自分を思い出すことが増えてきたんです。人前で話したいという気持ちが、まだ心の中でくすぶっていたんですね。それで、20代のころに通っていたアナウンサー事務所に顔を出してみたところ、偶然にも落語教室が開かれていて。「おもしろそうだな」と、最初は軽い気持ちで興味を持ったんです。
ただ、子どもたちがまだ小さかったので夜の教室に通うのは難しいと思っていたんですが、ママ友が「子どもたちを預かるから、気晴らしに行っておいで」と背中を押してくれて。それで週に一度通うことになりました。もちろん、毎回ママ友に子どもを頼むわけにもいかないので、託児所も使いながら3年間通いました。 ── 落語のどこに魅力を感じたのでしょう。 あら馬さん:やっぱり自由に演出できるところですね。アナウンサーの仕事は放送禁止用語など、いろんな制約があったり、役者だと演出家の指示どおりにやらないといけないので自由にセリフは言えません。でも、落語は違うんです。自分の言葉で、その場の空気を読みながらノリでアドリブが入れられる。「これ、私にすごく合っているな」と感じました。15分の長ゼリフをもらうことは今までなかったので、こんなに自由で楽しい時間があるんだと本当に新鮮でした。