カープ・一岡竜司氏が目指すアナリストの姿。「“数字が絶対ではない”を前提に、選手とコミュニケーションを取れる存在でありたい」
カープ球団を支える様々な人たちは、どんな仕事をしているのか? 本連載では、さまざまな立場・場所からチームを支える人たちにスポットライトを当て、裏側の役割を探っていく。 【写真】マツダ スタジアムで行われた一岡竜司投手の引退会見 今回登場するのは、現役時代は中継ぎとして3連覇に大きく貢献した一岡竜司さん。昨年限りで現役引退後は、カープ球団でアナリストとして第二の野球人生を歩む。アナリストとして奮闘中の一岡さんに、現在の仕事について聞いた(全2回・第2回) ◆今は、『チームの勝利ため』『選手のため』という思いが原動力 僕は昨年まで現役でしたが、アナリストの飯田(哲矢)くんを見ていて、単純に忙しそうなイメージを持っていました(笑)。いろんな数字を提示してくれていましたし、面白そうな仕事だとも思って見ていました。アナリストとして業務をして半年過ぎましたが、自分が現役時代の数字を改めて見てみると、面白いなと感じることもありますね。 現役時代は中継ぎ投手で出番が短かったので、今は単純に「オンの時間が長いな」という感じがあります。中継ぎ投手はマウンドで仕事をする時間だけを考えると、1試合で10分くらいですからね(笑)。もちろんマウンドへ向かうまでに準備をする時間はありますが、気持ち的なスイッチのオンオフの感覚で言うと、今は1日中スイッチを入れている感覚です。自分がしっかり勉強して準備して、積み重ねたことが結果につながっていくので、そういう部分もやりがいに感じています。 選手とのコミュニケーションは、基本的に選手側から数字を聞いてくることが多いです。僕から選手に数字的なことで話をするときには、必ずコーチを介して伝えるようにしています。選手個人に対してミーティングを設ける場面もありますし、数字が悪い場面だけではなく、良いときも含めて、選手との距離感を意識しながらコミュニケーションを取るようにしています。 業務ではやはり伝え方が難しいと感じています。選手にわかりやすく説明しなければならないですからね。僕らがコーチになってはいけないですし、僕らが提示する数値が、少しでもコーチが指導する材料になれば良いなと思っています。アナリストという仕事も球団として浸透してきているので、打者、投手はもちろん、コーチの方々と話をする機会も多くなってきています。 僕は現役時代は投手だったので、当時は試合中に相手投手を見て研究することが多かったですし、自チームも投手を見てしまうことが多かったので、打者を意識して見ることは少なかったと思います。そういう意味では、アナリストとして数値をもとに打撃コーチ、野手と話をする機会も多いので、もっと打者に対する知識をより深めていかなければいけないと思っています。現役時代は自分とタイプが似た投手の数値を比較して見る程度でした。ですので、今はさまざまな選手の数値を見ていますし、試合ごとに変わる選手の数値を見たりするので、新鮮さがあります。変化があった選手に関してはコーチと共有したほうが良いのでは? と感じることがあれば伝えています。 選手と会話の中で、「提示してもらった数字のイメージ通りでした」とか、「この器具を使って練習したらイメージ通りでした」など、僕らが提示した数字を使ってもらって、選手から効果が出たという声を聞いたときはやはりうれしいです。アナリストとしてのこだわりというか、意識していることは、データが絶対にならないこと、シンプルにコーチ・選手に伝えること、アナリストとして出過ぎないこと。これらを常に意識するようにしています。また、選手と気軽にコミュニケーションを取れるアナリストを目指したいと思っています。 選手時代はチームが優勝するために、自分の結果を追い求めて過ごしていましたが、今はチームのため、選手のため、という思いだけです。選手個々の成績が上がることが勝利に近づくと思うので、いまは裏方として、とにかくそれをサポートしていきたいと思います。
広島アスリートマガジン編集部