「ここにいて何になる?」終わらないシリア内戦、若者の絶望
シリア内戦は3月で7年目を迎えた。終わりの見えない戦闘の中で、シリアは国土も国民もひどく傷つけられた。戦火を逃れて国を離れた難民たち。身体に障害を負った若者たち。フォトグラファーの鈴木雄介氏が彼らを追った。
不安の中、治療を続ける
シリアの南に位置するヨルダン。その首都アンマンは、シリアとの国境までたった70キロほどである。 シリアでの内戦が7年目を迎えた今、国を追われて難民となった約630万人(国連の推定値)のシリア人のうち、約65万人がヨルダン国内にいるとされている。その中には、戦闘に巻き込まれ、地雷によって手足に障害を負ってしまった若者も少なくない。 アンマンのとあるリハビリ施設では、若くして障害を負ってしまった青年たちが、いつ終わるとも分からない戦闘への絶望と、自分たちの将来への不安を抱えながら治療を続けていた。
苦痛に顔歪むリハビリ
施設に入ると、10代後半から20代後半くらいの若者たちがいた。皆もれなく車椅子に乗っていて、運動器具がある部屋ではリハビリが行われている。 ベッドに横たわって足のリハビリを受けていた青年が、痛みに顔を歪ませ声を上げた。理学療法士と施設のスタッフにサポートされた若者が 車椅子から立ち上がった。歩行補助器具で自らの体を支え、数センチずつ、ゆっくりと歩を進める。健康な僕からすれば、そのスピードはまさにカタツムリが歩くようだが、彼にとっては足をほんの少し前に出すのだって断崖絶壁をよじ登るような苦労だろう。歯を食いしばって自分の足元を見つめる顔の額に汗が滲んだ。
車椅子を阻む急な階段
筋力がある程度回復し、松葉杖をつけるようになった患者が、少し外に歩きに行くことになった。 彼に着いて行こうとして先に玄関のドアを開けると、そこには急な階段が10段ほどあった。アンマンは、急な坂道がとても多い事で知られる。たくさんの丘があり、その斜面にへばりつくようにして家が密集しているのだ。バリアフリーなどという言葉はこの地域ではないに等しい。障害を持った人やお年寄りには厳しい街である。車椅子なら階段は男性4人に脇を抱えてもらわなければ上り下りできない。 こういった施設に入居できている人たちは人手を借りられるからまだ良いが、経済的、家族的な理由などで自宅に留まらざるを得ない大人の障害者たちは、結果的に家にこもりがちになる。そして社会との繋がりが段々と薄くなり、忘れ去られていってしまう。戦争で家族や友人を失い、自身も傷ついた挙句、孤独になるのはどれほど辛いことだろうか。