「米軍によるフーシ派攻撃」は、東アジアの安全保障にも大きな影響を与える
地政学・戦略学者の奥山真司が1月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカによるテロ組織再指定を「滑稽だ」と批判したフーシ派の指導者、アブドルマリク・フーシ氏について解説した。
フーシ派指導者が、アメリカによるテロ組織再指定を批判
イエメンの親イラン武装組織フーシ派の指導者アブドルマリク・フーシ氏は1月18日のテレビ演説のなかで、アメリカによるテロ組織再指定を「滑稽だ」と批判。アメリカやイギリスの攻撃に対抗を続けると強調した。 飯田)フーシ派が紅海で商船を狙って攻撃を仕掛けていることに対し、アメリカなどが既にオペレーションを始めています。 奥山)報復措置という形で攻撃を仕掛けています。特に今回はアメリカ、イギリス、オランダ、バーレーン、カナダ、オーストラリアが共同で空爆を行い、それに対抗してフーシ派もミサイルやドローンで米国企業所有の貨物船を攻撃しています。
紅海でのフーシ派の攻撃が与える世界経済への影響
奥山)これは世界経済にとって、とんでもないインパクトがあります。紅海の出口であるバブ・エル・マンデブ海峡や、その先のスエズ運河は、世界の海運の約3割が通ると言われています。ここを攻撃されたことで世界の貨物はいま、アフリカの先端にある喜望峰を回らなければならないのです。例えばIKEAのように中国でつくった家具などをヨーロッパへ運ぶ場合、貨物船がスエズ運河を通れないので、わざわざ南回りで行く必要がある。そうなると10日前後のタイムロス、および燃料費も約3割増しになるのです。 飯田)そうですね。 奥山)このインパクトは大きい。「どこまでアメリカがフーシ派を抑えるのか」ということについて、疑問に思っている部分もありました。2010年代に入ってからは、オバマ政権が「我々は世界の警察官ではない」と宣言しています。
世界の覇権国であるアメリカが「世界経済に影響を与える海の通り道を潰すものを許さない」という意思を示したことは大きい
奥山)ところが今回、バイデン政権はアメリカ主導で報復措置を行った。世界の海の通り道は国際的にみんなが使うもので、それが世界経済を下支えしている。ある意味のインフラではないですか。 飯田)インフラですね。 奥山)そのインフラを邪魔するフーシ派に対し、攻撃する形で「守ろう」という意思を示したことは、評価するべきだと思います。アメリカは覇権国と言われ、世界秩序を守る能力を持っていた。ただ、世界のグローバルな公共財である「海の通り道を守る」という意思はあまり持っていないと思われていました。しかし今回、「世界経済に影響を与える海の通り道を潰すものは許さない」と示したのは、意義があると思います。