見通しは(6月20日)
富士にまつわる三大話を。山梨県富士河口湖町の撮影スポットに、訪日客が殺到した。日本一の山の眺めには、万人が魅せられる。ところが、マナー違反が続出し、黒幕で目隠しが施されたという▼そこまでするか。こちらは、驚きを持って受け止められた。東京都国立市で、引き渡し直前のマンションが解体される。その名は、グランドメゾン国立富士見通り。名峰の眺望に影響が出てしまう―。住民から指摘を受け、施主は決断した。景観はビジネスに優先する。これもまた、時代の映し鏡か▼福島市では、吾妻小富士に近い先達山の景色が物議を醸す。大規模太陽光発電施設の建設に伴い、いつの間にか山肌が露出した。工事中止を求める署名活動が起きた。本紙「ひろば」欄には「痛ましい」との投書も。「一体どうなるのか」と、あいさつ代わりの会話も聞こえる。市は特設ホームページを設け、現状と対応を紹介し始めた。波紋は広がり続けている▼環境を守るため、再生可能エネルギーの未来には大きな期待が寄せられる。誰もが納得できるよう、丁寧に計画を進めたい。建物を除けば視界は戻るが、自然の再生は見通しの利かない例が出ないとも限らない。<2024・6・20>