『ズートピア』は新たな価値観を掲げるディズニー映画 『マイ・エレメント』との共通点も
ズートピア/エレメント・シティのデザインにも注目
それは単にキャラクターだけに限ったことではない。両者の舞台となるズートピア/エレメント・シティのデザインは、そこに暮らす種族たちに顕著な特性やイメージを盛り込み、カラーリングや造形が多様な姿をなしている。 街を動かすインフラの視点から見てみると、ズートピアでは砂漠の街「サハラ・スクエア」と雪と氷の街「ツンドラ・タウン」が隣接している理由が「生活に適した空気を双方に送り届けるため」であり、構造により種の共存を目指していることが分かる。対してエレメント・シティでは、船が主な輸送手段となっている点などから、元より火が存在していなかった頃に建造された街であることを示している。 「基本となるインフラは火のエレメントにとって困難を強いるので、エレメント・シティがエンバーにとって障害となることを象徴しています」と、『マイ・エレメント』を手がけたピーター・ソーン監督は言う(※)。種の違う者たちがひとところに暮らしているリアリティを包含した街のデザインもまた、キャラクターと並んで興味深い両作品の見どころだ。 人間の姿を描いていないのに、人間のリアルが垣間見える。これらの作品を観てそう思えるのは、ひとえに製作陣の類まれなるイマジネーションの賜物であり、それを観る私たちは、今一度映画の外の現実社会が「より良くなるために」邁進していかなければならないと思わされる。 ジュディがそのまっすぐな正義と優しさを持ち合わせた心で世界を一歩先に進めたように、私たちも今起こっている問題に目を向け、平等に人を見る目を持っていきたいーーそんな風に想像の力を再認識させてくれる作品は、これからますます世界に必要とされていくだろう。 参照 ※ 『マイ・エレメント』映画公式パンフレットより
安藤エヌ