開幕2戦で勝点1は最悪に近い結果。豪州はなぜ大苦戦? 10月の日本戦を前に徹底考察。正直に言ってしまえば…
バーレーンやインドネシアにとって守りやすいように見えた
森保ジャパンは北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終予選で、7-0、5-0と2連勝。快調なスタートを切った一方で、予選突破の有力候補と見られていたオーストラリアが苦しんでいる。 【画像】キュートな新ユニ姿を披露!日本代表戦中継に華を添えた影山優佳を特集! ホームでバーレーンに敗れると、続くアウェーのインドネシア戦もボール支配率やチャンスの数で上回りながら、相手の堅守をこじ開けられずにスコアレスドロー。2試合で勝点1は最悪に近い結果だろう。 もちろん前回の日本がそうであったように、ここから巻き返して日本の強力なライバルになってくる可能性も少なからずある。ただし、この2試合で見られた問題点は、チームの好不調で片付けられないことも確かだ。 守備に関して言うと、終盤に10人になったバーレーン戦でオウンゴールによる失点は喫したが、2試合で1失点という結果の通り、守護神マシュー・ライアンが支えるディフェンスが、目立った破綻を見せているわけではない。 ただし、攻撃につなげる守備という意味では、ボールを高い位置で奪い切る守備が、日本のように徹底されているわけではなく、ボランチのジャクソン・アーバインやエイデン・オニールの守備位置も落ち気味ではある。 やはり初戦のバーレーン、2試合目のインドネシアともに強力な前線の選手に縦のボールを当ててくると、下がりながら自陣で処理するシーンは増える。そこから裏返しでカウンターを打つことが少なく、まず自分たちがボールを保持してからのビルドアップで押し上げるスタイルは、バーレーンやインドネシアにとって守りやすいように見えた。
数少ない希望はバイエルンに所属する18歳
ボールを大事に動かして相手陣内に押し込みながら、サイドで数的優位を作って崩す基本スタイルはグレアム・アーノルド監督が6年間植え付けてきたもので、それ自体は悪くない。ただ、相手の守備が整う前に素早くゴールを目ざすべき状況でも、中盤や最終ラインでボールを持って時間を使ってしまうのは悪癖化しているかもしれない。 それでも相手を押し込んだ状態から、人数の揃った守備を崩していくプランが整理されて、クオリティが出せればバーレーンやインドネシアのゴールをこじ開けることは可能だろう。しかし、確固たる前線のエースが確立されておらず、2次予選で台頭してきたイングランド2部ポーツマス所属のFWクシニ・イェンギは、バーレーン戦の終盤で退場し、インドネシア戦は出場停止となってしまった。 中盤に従来のアルディン・フルスティッチや、アーロン・ムーイほどの攻撃の中心を見出せていないこともあるだろう。正直に言ってしまえば、前目のポジションは現状、タレントの小粒感が否めない。 数少ない希望はバイエルン・ミュンヘンに所属する18歳のFWネストリ・イランクンダの台頭だ。タンザニア生まれで、類稀な身体能力と攻撃センスを持つ新進気鋭のアタッカーは、インドネシア戦でFC町田ゼルビアのミッチェル・デュークと2トップを組んで、元セレッソ大阪のジャスティン・ハブナー擁する5バックを脅かした。しかし結局、待望のゴールをもたらせずに、後半の早い時間帯でMFアワー・メイビルと交代させられた。 そうした選手構成を見ると、ちょうど世代交代の時期とも見れるが、森保ジャパンと同じくカタールW杯を挟み、アーノルド監督が率いて2サイクル目の半ばに入っている事実を考えると、そうした言い訳がしにくい状況にあるだろう。 ボールは持てるが、高い位置で奪って攻め切るような選択をあまり取れないので、攻撃のベクトルとタレントがよほど噛み合わない限り、ここからの巻き返しは難しいかもしれない。 10月シリーズの1試合目はホームで中国戦、そしてオーストラリアにとっても前半戦の山場となるアウェーの日本戦に臨むことになる。現在2連敗中で最下位の中国からも得点を奪えないようだと、アジア枠が8.5に拡大されたとはいえ、早くも敗退危機に追い込まれることになるだろう。 文●河治良幸