文字通りの“空飛ぶクルマ”、クルマと飛行機のハイブリッドモビリティ「スイッチブレード」が初飛行に成功
ついに誕生した“本当の”「空飛ぶクルマ」
2023年11月10日(現地時間)、アメリカのスタートアップ企業「Samson Sky(サムソンスカイ)社」が、本当の意味での空飛ぶクルマ「Switchblade(スイッチブレード)」の初飛行に成功したと発表した。しかも、プライベート用小型飛行機としては圧倒的にコストパフォーマンスが高い価格設定がなされている。 【写真】空飛ぶクルマ「スイッチブレード」をもっと見る スイッチブレードは「飛び出しナイフ」を意味する英単語で、その名の通り格納式の翼を搭載した3輪タイプの2人乗り自動車である。普段は自宅のガレージから最寄りの空港まで普通の自動車(地上走行モード)として公道を走行。空港に到着したら3分以内に主翼と尾翼の展開が完了し、飛行用のフライトモードに移行可能という陸・空ハイブリッド機なのだ。 エンジンの動力は、地上走行モードではタイヤを、飛行モード時はプロペラを回すようになっている。地上走行モード時は最高速度201km/h、燃費14km/L、フライトモード時は最高速度305km/h、巡航速度257km/h、燃費36L/hで、航続距離は最大724kmというスペックを持つ。 航空機として考えると、離陸滑走距離335m、着陸距離213mと非常に短く済むので、世界一短い滑走路を持つオランダ領サバ島のファンチョ・E・ヨラウスクィン空港(396m)にも離着陸できることになり、理論上は世界中のどの空港でも利用できる機体と言えるだろう。 また、航空燃料ではなくオクタン価91の自動車用ガソリンを燃料とした独自のハイブリッド電動システムを採用しているため、一般的なガソリンスタンドで給油することができる。
初飛行の様子と今後の見通し
記念すべき初飛行はアメリカ北西部ワシントン州モーゼスレイクのグラント・カントリー国際空港で行われた。テストパイロットはボーイング社で787の飛行試験監督を務めたロバートモーレ氏が行い、高度は500フィート(152m)で、空港敷地内と周辺の田園地帯の上空を約6分間飛行した後、無事、着陸に成功した。 本機はすでに世界57カ国から2300件以上の予約が入っており、ダッシュボードは左ハンドルだけでなく右ハンドルにも対応した設計がされているので、日本の空でも飛んでいるところが見られるかもしれない。 もっとも、発売開始時の予定価格は17万ドル(約2562万円)から設定されているのだが、実は小型飛行機の代名詞、セスナ社の最新機種「セスナ 172 スカイホーク」の価格35万9000ドル(約5411万円)の半額程度とプライベート用の小型航空機としては非常にリーズナブル。クルマとしても利用できることを考えれば、圧倒的バーゲンプライスとも言える。 しかも、寒冷地仕様のスノーバードモデル、極寒地仕様のオーロラモデル、起伏の激しい地形や熱帯地域向けのトレックモデルなど、世界各地のニーズに合わせたバラエティーモデルも設定予定と今後の展開にも期待が膨らむ。 今回の初飛行はあくまでもプロトタイプモデルであり、量産化にはまだ時間はかかるようだが、文字通りの ”空飛ぶクルマ” として製品版が出る日を楽しみに待ちたい。 【主要諸元 サムソンスカイ スイッチブレード】 ・全長×全幅×全高(フライトモード時):5100(6200)×1800×1500mm ・翼長:8.2m ・乗車定員:2名 ・推定最大離陸重量:840kg ・推定ペイロード:260kg ※人、荷物、燃料込 ・最高速度(フライトモード時):201(305)km/h ・巡航速度:257km/h ・最大航続距離:724km ・離陸距離:335m ・着陸距離:213m ・失速速度:108km/h ・エンジン:192ps 水冷3気筒スカイブリッド ・燃費(フライトモード時):14km/L(36L/h) ・燃料種別:オクタン価91自動車用ガソリン ・燃料タンク容量:125L ※予備タンク込み