テレビ局前社長の退任慰労金減額めぐる訴訟、訴えられた局側は「民法・会社法の解釈に誤り」と主張
原判決「民法・会社法の解釈に誤り」と主張
池田弁護士は続けて、本件での主要な争点について説明。 一つ目の争点はUMKの取締役会による一連の決定は株主総会から与えられた裁量を逸脱・濫用したものかというものである。 一審判決と原判決では、退職慰労金の減額は「重大な損害を与えた」場合にのみ認められているものであり、「CSR費用等の過大な支出」分を減額できるとした調査委員会の見解は誤りであると判断。誤った見解を前提に金額を決定した取締役会は株主総会に与えられた最小を逸脱・濫用したと結論づけていた。 また、二つ目の争点は寺村社長に株主総会決議の委任の範囲や、慰労金内規の解釈適用を誤った過失があるか、というものである。 これについても、これまでの判決では、取締役は調査委員会の見解が誤りでないか独自に判断すべきであり、寺村社長は委任の範囲や、解釈適用を誤った過失があると判断されていた。 池田弁護士は続けて、これらの争点に対するUMK側の主張について説明。 「退職慰労金を含む、取締役報酬の決定は性質上『高度な経営判断』を含むものであり、取締役会には支給の有無や、支給金額の決定について広範な裁量が認められます。 そのうえで、内規に記されている減額の要件については『特に重大な損害』としている以上に、制約を定めているものではないので、退職慰労金についての取締役会の決定が裁量の範囲内かどうかについては、取締役会に広範な裁量が認められていることを前提に判断される必要があります。 ところが、原判決は取締役会の裁量を非常に狭く解釈したものであり、誤っています」 続けて、2つ目の争点についても「取締役会が株主総会から与えられた裁量を逸脱・濫用したものではない以上、寺村社長の過失が問題になることはない」としたうえで、次のように加えた。 「取締役が取締役報酬やその他の経営判断について、専門家の知見を信頼した場合には、その専門家の能力を超えると疑わせるような事情があった場合を除いて、その信頼は保護され、事後的にその判断が誤りであっても過失の評価を受けないという『信頼の原則』が一般的にあります。 にもかかわらず原判決では、調査委員会の調査方法等に不適切な点がなく、専門家の能力を超えると疑わせるような事情が見当たらないのに、『寺村社長は調査委員会の見解が誤りでないか、独自に判断すべきであった』としていました。 こうした点において、原判決には民法・会社法の解釈に誤りがあります」 この日の口頭弁論をもって裁判は結審。7月8日に判決が言い渡される。
弁護士JP編集部