結成16年「尼神インター」の解散は前向きに捉えていい…4年前に別れを告げていた“芸人としての武器”
解散には納得できる部分がある
誠子と渚の2人から成る人気女性コンビ・尼神インターが3月末に解散してしまった。彼女たちの突然の解散発表は多くの人を驚かせることになった。 【写真を見る】「めっちゃ綺麗です!」…誠子が見せるとびきりの笑顔
しかし、彼女たちのこれまでの活動の流れを見てきた立場からすると、2人が解散という道を選んだのも納得できなくはない。もちろん、才能あるお笑いコンビが解散してしまうのは残念ではあるのだが、彼女たち自身の意志は尊重されるべきだろう。 尼神インターの漫才は、一度見たら忘れられないほどのインパクトがあった。基本的なネタの構造としては、誠子が自信満々に「イイ女」風の態度を見せて、渚にきつくツッコまれる。ときには男性役を割り振られた渚と小芝居を繰り広げることもあった。
容姿いじりに対する感覚の変化
誠子が「イイ女」を演じることが笑いになっていたのは、彼女が自分自身を「ブス」として位置づけていることを前提にしていた。「今の時代にそこまでやるか」と思ってしまうほど、誠子は徹底的にブスの立場から「イイ女」になりきっていた。 尼神インターの漫才が多くの人に支持されていた理由は、ネタが面白いのはもちろん、「イイ女」を演じる誠子に底抜けの明るさと屈託のなさがあったからだ。この手のネタでは、ボケる側に少しでも無理をしているような素振りがあれば、見る側が罪悪感を覚えて笑えなくなってしまう。誠子は振り切った演技によって文句なしの爆笑を起こしていた。 しかし、数年前から、彼女たちのネタの中身が少しずつ変わり始めた。それは、容姿いじりに対する世間の感覚が変わってきたのと同じタイミングだった。 尼神インターはネタの中で露骨なブスいじりをしなくなった。以前なら渚が誠子に対して「ブスやないか」とツッコむ場面もあったのだが、それがなくなっていた。ネタの本質的な部分が大きく変わったわけではないのだが、見せ方がマイルドになっていた。
「ブス」という武器が不要になった誠子
2020年に誠子が本名の「狩野誠子」名義で出版した著書『B あなたのおかげで今の私があります』(KADOKAWA)を読むと、彼女がこれまでの芸人人生の中で時代の変化を敏感に感じて、それに対応してきたことがわかる。 彼女は学生時代に男子から陰で「ブス」と呼ばれていたことにショックを受け、内向的な性格になってしまった。お笑いの面白さに目覚めて芸人の世界に入ると、ブスを名乗ることが人を笑わせるための武器になることに気付き、好きな仕事に打ち込んで充実した日々を送るようになり、性格も前向きになった。 だが、大阪から上京してからは、時代の変化と共にブスいじりをされる機会も少なくなり、むしろ「かわいい」「笑顔が素敵」などと褒められることも増えた。本書の最後には、もはや芸人としてブスという武器を必要としなくなった彼女が、自分の中で「B」と名付けていたブスに別れを告げる場面が出てくる。