「無印良品」が欧州で「破産」の報道 欧州の不調で東アジア中心が加速、国内も都会では「飽き」が見られる「小売りの優等生」の現在
例えば、新宿店ではアパレルに特化した店舗を導入した。特にアパレル部門は、2021年からの「ジェンダーレス」政策での売り上げの落ち込みが激しく、回復のためのテコ入れが必要だとされていた。そのための政策の一つがこうしたアパレル特化型店舗の設立だ。 これだけでなく、駅ナカなどを中心に日用品を中心とする品揃えの「無印良品500」も展開し、2023年8月時点で30店舗に達している。また、無印良品の定番商品ともいえる「カレー」の値下げに踏み切るなど、さまざまな施策に打って出ている。
この背景には、既存店での売り上げの落ち込みがある。2023年8月期の決算説明会資料によると、「全店+EC売上」が前年比で109.4%の一方で、「既存店+EC売上」が前年比で96.5%。客数は93.2%と、漸減傾向にあるのだ。客単価の上昇と、新店および新設既存店の寄与が大きいために見えにくくなっているのだが、都市部での「無印良品」の吸引力は、明らかに弱くなっている。 ■加速する地方出店と、地域との関わり
さらなる改革案として、ここ数年来、無印良品は地方にもその店舗を広げている。良品計画の年次レポート「MUJI2023」には、食品スーパーマーケットに隣接する場所を中心に、全国に出店を広げていく戦略が示されている。2024年3月12日には離島では初めてとなる店舗を「対馬」にオープンさせ、話題を呼んだことも記憶に新しい。 こうした地方出店の際、同社はチェーンストアとしては珍しい「個店主義」を貫き、その地域に合わせた店舗展開を行うことも、「MUJI2023」では示されている。新潟の直江津や北海道の函館など、全国各地に多様な無印良品が存在している。
地方出店の背景としては、「無印良品」というブランドを、より日常的に使うことのできるブランドにしたいという思惑があるだろう。スーパーマーケットの一角に置き、普段使いができる店にするというのは、売り上げを考える際には、確かに合理的だ。 ただし、こうした地方出店の際の標準店舗面積は600坪で、これまでの無印良品よりも大きい店舗となっていて、坪辺りの営業利益で苦戦していることも確か。 以上のように、無印良品は近年、都心店舗を中心とする改革、地方への積極的な出店という取り組みを行っているが、まだまだその成果は完全には花を咲かせていない、というところだ。