カナダとメキシコまで…トランプ氏、電撃的に関税賦課の方針表明(1)
即断即決で進められた人選を終えたトランプ次期米大統領が就任前から超強硬関税カードを切り出した。就任初日に米国の3大貿易相手国である中国、メキシコ、カナダに高率の追加関税を課すと明らかにした。トランプ氏が関税を課すという3カ国のうち中国を除いたメキシコとカナダは米国と貿易協定(USMCA)を結んでいる。韓米自由貿易協定(FTA)を締結した韓国も関税爆弾の対象になりかねないという意味だ。 トランプ氏は25日、自身のソーシャルメディア(SNS)トゥルースソーシャルに「(就任日である)1月20日に最初の大統領令のひとつとしてメキシコとカナダから米国へのすべての製品に25%の関税を払わせるのに必要なすべての書類に署名する」と投稿した。中国に対しては「すべての中国製品に対し(既存の)追加関税に加え10%の追加関税を課す」とした。トランプ氏はこれらの国が違法移民と麻薬問題に十分に協力しなかったとし、関税適用期間を「麻薬、特にフェンタニル流入と違法に国境を超える移民をしっかり取り締まる時まで」と釘を刺した。 この日電撃発表された3カ国に対する関税賦課方針は大統領選挙の際に提示してきた公約にもなかった内容だ。トランプ氏は選挙期間に▽すべての輸入品に10~20%の普遍関税▽中国に60%の関税▽メキシコで生産された中国メーカーの自動車に100~200%の関税を課す――と公言してきた。 ◇麻薬・移民問題に「関税カード」…韓国防衛費圧迫に使われる恐れも トランプ氏はこれまで関税が必要な理由として米国の労働者保護と製造業復興、自動車産業保護など経済的理由を挙げてきたが、この日は追加関税を課す計画を明らかにしながら麻薬と移民問題を理由に挙げた。経済だけでなく全分野で関税を相手国に対する圧迫手段として活用できるという意味と解釈される。 こうした構想はトランプ氏当選とともに予告された。財務長官に指名されたベッセント氏は15日にフォックスニュースに寄稿したコラムで「関税は大統領の外交政策目標を達成するのに役立つ道具」と明らかにした。ベッセント氏は「同盟国が自主国防にさらに多くの費用を支出するよう誘導したり、海外市場を開放したり、違法移民終了とフェンタニル密輸取り締まりに対する協力を確保したり、軍事的侵略を抑制したりすることなどで関税は中心的役割をできる」と強調した。 トランプ氏は先月のウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューでも「中国が台湾に侵攻すれば150~200%の関税を課して対応する」として関税を対中国安全保障問題に活用する可能性を示唆した。トランプ氏は韓国を「マネーマシン」と称して先月韓米が合意したより9倍多い100億ドル(約1兆5310億円)の防衛費分担金を出すべきと主張してきた。場合により関税を防衛費分担金引き上げに向けた圧力手段として活用する可能性も排除できないとの見方も出ている。 ◇韓国、昨年だけでメキシコに1兆ウォン投資 米国「優先主義」に対する懸念が浮上し外国為替市場は揺れ動いた。ドルは上がり関連国の通貨は下がった。ソウル外国為替市場によると26日のウォン相場は前営業日終値の1ドル=1402.20ウォンより2.80ウォンのウォン安ドル高となる1ドル=1405ウォンで取引を開始し、その後1407ウォン台までウォン安が進んだが1398.20ウォンで引けた。 大統領に就任するまで2カ月ほど残った状況でトランプ氏が関税カードを持ち出し韓国の産業界には緊張感が広がっている。トランプ氏が中国を相手に関税戦争に出る場合、韓国も打撃が避けられない。韓国開発研究院(KDI)のチョン・ギュチョル経済展望室長は「米国の牽制で中国完成品の対米輸出が減れば中国に中間財を輸出する韓国も否定的影響を受けるほかない。また、中国の景気が悪化すれば中国への輸出が全体的に減少する点も問題」と話す。