生涯獲得賞金22億円超の片山晋呉 17歳から心に刻むジャンボ尾崎の言葉とは
国内男子ゴルフで通算31勝を誇る永久シードプレイヤーの片山晋呉。51歳になった今でもレギュラーツアーで活躍する。そんなレジェンドが男子プロの深堀圭一郎がMCを務めるALBA TVのトーク番組「K’s STUDIO」に出演。プロ生活30年目、片山の原点にはジャンボ尾崎の言葉あると明かした。 【独占】片山晋呉が明かしたジャンボ尾崎との秘話【動画】 ■「俺以上に頭を使え」 高校2年の片山に伝えたジャンボの言葉 片山は1995年にプロ転向してから通算31勝を挙げ、賞金王を5度獲得している。2001年には海外メジャー「全米プロゴルフ選手権」で4位に入り、09年には「マスターズ」では単独4位に入るなど、国内にとどまらず世界でも活躍した。 生涯獲得賞金は22億8000万円を越え、ジャンボ尾崎の約26億8800万円に次ぐ歴代2位。シニアと掛け持ちした昨シーズン、賞金シードから陥落したが97年から25シーズン連続で保持。こちらもジャンボ尾崎の32年連続に次ぐ歴代2位の記録である。ちなみに賞金王5回も、青木功と並びジャンボ尾崎の12回に次ぐ2番目に多い。 輝かしい戦績を残している片山だが、身長171センチと体格的には恵まれていたわけではない。体のハンディを克服するために常に最新の技術論を研究したり、新しいクラブを試したり、独自の練習方法を取り入れてきた。その姿を見てきた深堀は強さのヒミツを“探求心”と挙げる。その継続できる力の秘密を片山に聞いた。 「これはさかのぼると高校2年生の頃です」とはじめた片山。高校ゴルフ界の名門・水城高校(茨城県。現在は廃部)時代である。「ジャンボ(尾崎)さんに、『練習に来い』といわれて家(ジャンボ邸)に行ったことがあって…その時にもらった言葉があるから、今でもできています」と明かした。 当時のジャンボは、2度目の黄金期を迎え国内では敵なしのスーパースター。対して片山は、プロゴルファーを目指していたわけではなく、「高校で1番になってみたいとかそういう感じでゴルフを取り組んでいた」時期という。練習を終えてジャンボ邸で食事をしている際に、「今、この瞬間からライバルを川岸良兼だと思え。川岸(良兼)をどうやって倒すかだけ考えろ」と片山はジャンボから“指令”を出された。 川岸良兼は国内ツアー通算6勝のプロゴルファーだが、1989年にプロ転向して、デビューしてすぐに強烈な印象を残した。身長180センチの恵まれた体格から繰り出される飛距離が武器。ドライバーが木製のパーシモンヘッドの時代でも300ヤード飛ばしていたといわれる。プロ2年目の90年には年間3勝を挙げたが、それぞれの大会の優勝争いの相手は、ジャンボ尾崎、青木功、中嶋常幸の3人が含まれていて、AONを直接退けた。片山が高校2年の頃、まさに飛ぶ鳥落とす勢いの次代のスター選手だった。 ■本を読みあさり高校時代に“成功の秘訣”を知った 川岸を倒すためのヒントとしてジャンボが付け加えたのは「お前は体も小さいし、ボールも飛ぶわけじゃないから、俺以上に頭を使え」と。圧倒的な飛距離を持つ川岸を倒すのは簡単なことではないが、パワー以外のところで勝負をすれば可能性は生まれてくると。 その教えは片山がプロになって持ち続けた。国内外で戦うためにロングアイアンの代わりにショートウッドやユーティリティを積極的に投入。パワーに勝る工夫をしてきた。まさにジャンボの“頭を使え”という言葉が片山の原点になっていた。 頭を使うために本を読むことも推奨された。片山少年は書店の自己啓発コーナーに行き、「自分が知っている日本で成功している人たちの本を読みあさった」。自宅から高校までの通学時間は1時間30分。“成功する秘訣”の本に目を通した。 「高校生の頃って、世の中に出ていないから、まだ失敗していないじゃないですか。部活で勝った、負けたぐらい。だから。人生でなんにも失敗していない、真っ白なキャンバスに成功の秘訣を2年間ぐらいずっといれていた。成功するって結構簡単だなって思っちゃって」。 成功の秘訣を頭の中に叩き込んだ片山は、「成功するために、これをやったらゴールが見えてやれる。これをやっておけば成功するというのでずっとできている。僕の人生の中で一番大きい」。強い相手を倒すために頭を使ってその道筋を決める。周りから見たら地味に見える練習でも自身では必要な練習としてとらえて反復できる。その思考が探求心の塊、片山晋呉を作ったのである。 高校時代のエピソードを賞金王になってからジャンボと話したことがあるという。「覚えていないっていうんですよ。『お前、ウチに来たか?』って(笑)。まあそんなもんだよなって思いながらも、僕の中ではちゃんと覚えていますから」。史上7人目の永久シード選手であり、歴史的な記録をいくつも作った片山は、ジャンボ尾崎からしっかりとバトンを受け取っていた
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