『スプラトゥーン3』“サイド・オーダー”インタビュー。ミズタの包帯やヒメの新衣装の値段、秩序の街の住民の設定など、スミズミまで聞いた
任天堂より発売中のNintendo Switch用ソフト『スプラトゥーン3』(スプラ3)。そのダウンロードコンテンツである"エキスパンション・パス"第2弾"サイド・オーダー"が2024年2月22日に配信された。 【記事の画像(33枚)】を見る 主人公のハチ(8号)の能力をカラーチップで強化しながら秩序の塔の最上階を目指すという、何度もくり返し遊べるひとり用モードだ。そんな本作のキャラクター設定やデザイン、サウンドのコンセプトなど、気になる点をスミズミまで開発者にインタビューした。 ミズタが包帯を巻いている理由や、ヒメの新衣装の値段、ユメエビが独特な言い回しをする理由など、ファン必見の話題を大量のコンセプトアートとともにお届けしよう。なお、記事中には“サイド・オーダー”のネタバレを含んでいるので、未プレイで知りたくないという方はご注意を。 『スプラトゥーン』の可能性を広げる秩序の街での冒険 ――“サイド・オーダー”の配信おめでとうございます。“2024春 Fresh Season”との並行で開発スケジュールはたいへんだったのではないでしょうか? 松本 そうですね。てんやわんやしながらも、楽しく開発を進めました。 ――“サイド・オーダー”は色がないハイカラスクエアが舞台ですが、これは最初から決まっていたのでしょうか? 井上 “サイド・オーダー”は『3』の発売後から開発がスタートしました。当初は『2』のファイナルフェスで選ばれなかった“秩序”をテーマとするダウンロードコンテンツを制作したい、ということ以外は決まっていませんでしたね。 ――くり返し“秩序の塔を上る”というゲームの目的もダウンロードコンテンツの制作が始動してから決まっていたのですか? 松本 そうですね。“サイド・オーダー”の企画の大枠の中で考えたものですが、何度もくり返し挑戦する構造と塔という舞台は相性がいいので、早期の段階で正式に採用することになりました。 『2』のダウンロードコンテンツの“オクト・エキスパンション”は深海が舞台で深く潜っていく構造だったので、今回の最上階を目指して上るという構造は対になっていてキレイにはまったと思っています。 ――バーチャルな世界で秩序を描いた理由を教えてください。 井上 本編やヒーローモードとは遊びかたの構造が大きく変わるので、それが扱いやすい世界にしました。ただ、ゲームの中で仮想世界を作るので、わかりやすくバーチャルな印象にすると既視感のある仮想世界になってしまいがちです。そのため“有機的で、どこか温かな秩序”という表現を目指しました。 ――ちなみに、“サイド・オーダー”クリアー後にはハイカラスクエアをホームタウンに設定できますが、『3』ということで最初からホームタウンを3ヵ所にする予定だったのでしょうか。 井上 ダウンロードコンテンツの企画を考えたとき、“秩序をテーマとしたひとり用モード”という軸のほかに、『3』から遊び始めてくださったプレイヤーの方々にもハイカラシティやハイカラスクエアを知っていただきたいという思いもあったんです。そこで、“街”自体を追加するというまとめかたを考えました。 ――ハイカラスクエアの広場ではテンタクルズが今後のフェスを盛り上げてくれるのでしょうか? 須戸 そうです。フェスの前半はワールドツアーでヘビーローテーションされる中でファンキー&スマートにリメイクされた『ウルトラ・カラーパルス'24』。後半は、かわいさとパワフルさが共存するドラマチックな新曲『ヘッドライナーズ・ハイ』を歌います。どちらもお見逃しなく! ――“サイド・オーダー”はこれまでのひとり用モードに比べて、くり返し遊ぶことに重点が置かれているように感じました。その理由を教えてください。 松本 これまでに、『2』のヒーローモード、“オクト・エキスパンション”、『3』のヒーローモードと、ステージを進んで攻略する遊びを3回作っています。 とくに『3』のヒーローモードはいままでのひとり用の総決算的な内容になったので、“サイド・オーダー”は「『スプラトゥーン』ではこんな遊びもできるよ」という新しい提案をするいいタイミングだと考えました。 くり返し遊べる構造にすることで、ネットワークがないときやスキマ時間にサクッと挑戦して毎回違う味を楽しんでいただけるようにしたいという狙いがありました。 ――チップの強化にはある程度ランダム性がありますが、難度やブキの強さのバランス調整は難しかったのではないでしょうか? 松本 広くチップを取っている状態と、特定の項目に特化した状態を比べると、プレイヤー側の性能の振れ幅がとても大きくなります。難度という基準では、広くチップを取っている状態をベースに、この性能があるとクリアーしやすいという要素を盛り込んでステージにまとめるという手法を取っています。 ――広くチップを取っている状態を平均として考えて難度を設定されたと。シリーズで初めてダメージの数値が表示されていることにも驚きました。 松本 プレイを進めるにつれてプレイヤーが強化されていくため、ダメージの上昇を体感しやすくしたり、いろいろな攻撃手段の比較をしやすくしたりするために数値を表示する必要がありました。 デジタルなフォントは単純に視認性がいいですし、ゲームの世界にも合った表現になっています。ただ、単純なデジタルな表現にならないように専用のフォントを用意してもらいました。 ――チップごとに強化の方向性はさまざまですが、今回のものが選定された基準などはありますか? 松本 まず、プレイヤーの攻撃、移動、塗りなどの行動を分類して理想形と思われる状態をいくつも定義しました。簡単に言うと“イカロールをするだけで敵を倒せる”みたいなイメージです。 そして、その理想形に近づくための効果を選出して統廃合されていったものがベースとなっています。その過程で新しい組み合わせが生まれるなど、作っているあいだにもいろいろな発見がありました。 ――これからプレイする人に向けて、攻略にオススメのブキやチップを教えてください。 松本 どれもオススメなのですが、チップを集めるときに同じ色、つまり同系統のチップを集めることを意識すると強みを出しやすいのでオススメです。個人的にはラッキー系統のチップを集めて画面をアイテムだらけにするのが好きです。 ――チップ集めのコツはありますか? 松本 パレットごとに出やすいチップの系統が設定されているので、迷ったら出やすいものを選んでいくのがいいかなと思います。出やすい系統の確率はイイダのハッキングで上げることもできます。 ――ちなみに、各パレットでキャラクターとブキがセットになっていますが、彼らの持ちブキということですか? 松本 各パレットのもとになったキャラクターの持ちブキや、各キャラクターが持つならこれかなと思っているブキ、似合いそうなブキをネリバースのシステムが勝手に判断して設定しています。 ――配信直後から多くのプレイヤーが挑戦し、かなり早くクリアーされているものもありました。タイムアタックもかなり盛況ですね。 松本 正直、想定していたより早く進めておられるプレイヤーの方が多く驚きました。それだけでなく、思い思いの楽しみかたをされていることを本当にうれしく思います。 “サイド・オーダー”の配信以降、バトルやサーモンランをプレイする方も増えているので、『スプラトゥーン』というゲーム全体を楽しんでいただけているのではないでしょうか。今後もこういった取り組みを続けて『スプラトゥーン』の可能性を広げていければいいなと思います。 ヒメの新衣装は2億ゲソ!? デザインのコンセプトとともに意外な裏話も明らかに ――続いて、“サイド・オーダー”に登場する、いろいろなデザインまわりについて聞かせてください。 井上 “サイド・オーダー”については、これまで本編を作っていたスタッフが軸を決めつつ、『1』や『2』を学生のころに遊んでいたくらいの若いスタッフが中心になって進めました。 熱量がとても高く、色のない秩序の世界を彩るさまざまなものを詰め込んでくれました。いただいたご質問については、スタッフそれぞれが考えてくれたことを代表として我々3名でお答えしたいと思います。 ――ヒメ、イイダの新衣装のコンセプト、イメージを教えてください。ヒメの宇宙服のようなジャケットやイイダのゲソ(毛先)の星のような模様など、宇宙がモチーフになっていると感じましたが、その理由は? 井上 世界レベルのアーティストになっているので、ヒメの服は世界を超えるという勢いで作った宇宙服です。専用のオートクチュールで、2億ゲソはかかっています。 ――2億ゲソ……さすがトップアーティストですね。イイダのほうはいかがでしょうか。 井上 イイダは色の強いセットアップのスーツが似合うと思ったので、バチっと決めつつも、エンジニアっぽい印象も出るような感じにしてみました。イイダのゲソ(毛先)は、ヒメの勢いに感化されて宇宙模様になったようです。 ――ミズタが左手に包帯を巻いている理由も教えてください。 井上 8号より少し前に仮想世界に巻き込まれて、同じように塔を攻略しようとがんばっていたのですが、思ったより動けずにケガしました。養成所でサボっていたことをちょっと後悔していると思います。 ――ちなみに、Dedf1shはミズタのDJとしてのアーティストネームなのでしょうか? 井上 そうですね。自分で考えていると思います。たぶんハンドルネームとして考えたものを使っているのではないでしょうか。 ――カラーパレットのモチーフは何ですか? タッチで音が鳴るギミックもSNSで話題になっていましたが、音の仕掛けも含めて、デザインの経緯をお聞かせください。 井上 絵具のパレットと、MIDIパッドですね。MIDIパッドはライブや音楽制作で使う機材です。ちなみにカラーチップは、色指定に使うカラーチップを端子が付いたデバイスっぽくしています。モノとしていい感じにできたので、実物が欲しいです(笑)。 須戸 最初タッチで鳴るギミックはなかったのですが、開発中のある日プログラマーさんが作ってくれていてビックリしました。 チップの音の大部分はテンタクルズ曲の断片です。メロディーだけじゃなくパーカッションなども入れて、音にバリエーションを持たせることで、集めて楽しくなるようなものにしました。あと、オーダコ戦でパレットを叩いてみると、何かが聴こえてくるかも……。 ――敵を魚にした理由はありますか? 骨のようなデザインにした理由も併せて教えてください。 井上 白い世界が舞台なのでデザインのモチーフとして骨は自然に挙がってきました。それぞれがシンプルな命令に従って動く大量の敵をどんどん倒していくというコンセプトがあったので、意思を感じづらい骨の魚群がデザインとして適していました。 最初はけっこうリアルな骨だったのですが、担当者の提案で、不気味な印象は残しつつも、愛せる感じにまとまりました。 ――敵の名前が音楽用語になっている理由を教えてください。 井上 音楽制作に関わるイイダが作った世界なので、音楽用語にしました。名前が付く前は“はねる敵”や“ボムピューピュー敵”などと呼んでいたので、随分かっこよくなりました。 ――ボスのイメージ、デザインのコンセプトなどについてもそれぞれ教えてください。イイダ・エジタンドは秩序に支配されたようなイメージでしょうか? 井上 最初にコンセプトアートを描いたときには、自分が作った仮想世界に支配されてしまったイイダを8号とヒメが助けにいくということはすでに決めていました。 このスケッチを起点にしつつ、遊びの部分を固めていく中で、オーダコの足に覆われたデザインに仕上げてもらいました。秩序を望む力の影響で、『2』のファイナルフェスに関連したデザインが使われています。 ――ゴロゴロマルチャーレはいかがでしょうか。だんだんと殻が壊れて小さくなっていくボスでしたが、モチーフを教えてください。 井上 ウニがモチーフのボスですね。ちなみに、 ステージに置かれているバンパーは醤油さしになっていて、ぶつかると醤油が出ます。殻が壊れる前の第一形態は突起がプリンになっており、バンパーの醤油とぶつかることでウニ味になります。 ――プリンに醤油をかけるというあの組み合わせ……! というか、あの黒い液体は醤油だったんですね。 井上 ちなみに、第二形態のときの殻の突起物は米びつになっていて、中にシャリが入っています。機能にカタチと海鮮ネタを入れた、おもしろい仕上がりになりました。 松本 ほとんど自分では動かないボスですが、小さくなるほど転がりやすくなるので、バンパーを狙って転がすのが難しくなっていきます。 ――カイセンロンドは回転寿司をイメージされたのでしょうか? 戦闘中は叫び声のような歌声が聴こえますが、あれはいったい……? 井上 もともとはイイダが作ったおもてなしロボットでしたが、オーダに乗っ取られてしまい、禍々しく攻撃的になってしまいました。 デザインとしては回転寿司とメリーゴーランドをモチーフにしていて、ステージはハノプティコン(円形の監獄)やサーカス場から着想を得ています。 須戸 カイセンロイドが歌っている歌ですが、秩序の世界はみんなの記憶で構築されているので、もしかすると誰かの記憶に深く刻まれている歌を歌っているのかもしれませんね。 ――インクリングのような見た目のイカイノカノンは、イカのプレイヤーをコピーした存在ですか? 井上 オーダによって、最強格と噂されるインクリング“4号”のデータがコピーされ、ペースト状になった存在です。よく見るとドロドロしています。仮面タイプが4号のコピーで、ヘルメットタイプが4号のコピーのコピーです。 『2』のセーブデータがあれば、その中の4号の姿を模倣して現れるようになっています。 記憶が集合してできた秩序の街 ――ネリバースは、イイダがハイカラスクエアをコピーして作った仮想世界だと思うのですが、空中に突然四角いオブジェや螺旋のようなバーが出てきたり、雪のようなものが降っていたりします。あれはどういったイメージなのでしょうか? 井上 仮想世界を構成するプログラムの各要素を、プランクトンのような形として表現しています。 秩序の街になったハイカラスクエアやエントランスに出現するオブジェは、プランクトンが音に反応し発光したりしているものです。 学生のころにインスタレーション作品(※)を作っていたスタッフが提案、担当してくれて、本格的なものができました。 インスタレーション:展示空間そのものを作品の一部とするアートの手法。 ――ステージの背景も工場のような場所や“オクト・エキスパンション”の実験施設で使われていたものなど、いろいろとありますが、こちらのイメージを教えてください。ユメエビのお店に並ぶパンケーキや絵本なども含め、これはイイダの子ども時代の記憶などがもとになっているのでしょうか? 井上 はい。イイダやタコたちの記憶をもとにしています。ステージの背景にはいろいろな思い出のオブジェの入ったキューブが見えますが、あれが記憶を抜き出したものです。 秩序の塔は、記憶のキューブが生成され、脱色を行い、最終的には焼却する工場として機能しています。秩序の街に降り注いでいる雪のようなものは塔から出た焼却灰です。キレイに見えるけどけっこうコワいです。 ――雪に見えていたんですが、灰ですか……! ネリバースに出てくる敵は、イイダが設定した課題ということでしょうか? 井上 敵たちはもとはイイダが設定した課題で、基本的にはもとから挙動は変わっていません。ただ、オーダがこのシステムを乗っ取る前はいまほどの攻撃性はなく見た目も異なっていたと思います。 ――オーダコ、コダコは、イイダの潜在意識が生み出したものなのですか? 松本 ネリバースに取り込まれたネリメモリーと開発に関わったエンジニアタコたちの思いが、イイダの潜在意識を触媒にしてオーダが生成されました。 生まれたてなのに、「秩序の世界を作らなければ」という思い込みと膨大な借り物の知識を詰め込まれており、アンバランスな状態です。 やがてオーダはスケルトーン(秩序の塔で出現する敵)の生成法を応用して体を形作りオーダコとなりますが、秩序の塔最上階での戦闘で押し付けられた目標と知識をほとんどふっとばされてコダコになった……という流れです。 ――今回、ヒメをドローンで登場させたのはなぜでしょうか。 松本 プレイヤーをいろいろな面をサポートしてくれる存在として、そして、プレイヤーが滑空できるようにしたかったので、ドローン状のものをプレイヤーが連れているようにしました。 物語でヒメが登場することは決まっていたので、ヒメをドローンにするとスッキリ収まりました。最終的にプレイヤー単体ではできない無茶な機能をヒメドローンがだいたい引き受けてくれました。 ――イイダにもとの姿に戻してもらってからは、ヒメは自由にドローンになれると思うのですが、ヒメ自身がドローンを選ぶ理由を教えてください。 井上 高いところが好きなので、自由に飛べるスタイルが気に入っているようです。 ――ヒメらしい理由ですね(笑)。Deadf1shとテンタクルズの新曲に驚きました。今回ミズタを案内役のひとりにしたのは、どんな理由からですか? 井上 仮想世界の案内役ということで、“オクト・エキスパンション”のナマコ車掌やヒーローモードのオルタナにいた人工知能のような存在が素直に浮かんだのですが、ちょっと味気ないなと思いまして。ミズタを起用しました。 ――白いハイカラスクエアにいる生物は何なのでしょうか? 井上 仮想世界を構成しているプログラムのノードが、生物(プランクトン)の姿として表れています。 ――トランクスを巻きつけているクラゲなど奇妙な外見のキャラクターが多いですが、デザイン面についてもお聞かせください。 井上 フクを“着こなしている”イカたちと違い、秩序世界の住人は、フクに“着せられている”状態です。そのため、トランクスを巻きつけていたり、ほとんど体を覆えていない布を巻いているだけなど、服に着せられているような見た目を意識してデザインしました。 ――ユメエビのローカライズ感のあるしゃべりかたが印象的ですが、キャラクター設定について教えてください。 井上 ユメエビは、プログラムのノードとして生きるプランクトンたちの中で唯一、この世界が仮想世界であることに気付き始めている存在です。 ネリバースに生き物の意識が集合した際、さまざまな意識が混ざり合ったものがたまたまユメエビに流れ込みました。あらゆる地方の生物の思考が混ざっているため、支離滅裂で訛りがあります。 博識ですが、ネリバースとともに生まれた赤子同然なので、何にでも興味のある性格です。 ――イイダやミズタがいた学校はタコゾネスだけの養成所で、オクタリアンは別のところで訓練しているのでしょうか? 井上 イイダやミズタがいた養成所は、タコゾネスの精鋭を育てることに特化した学校です。 オクタリアンにはそれぞれの養成所があり、ヒト型に変態しないタコトルーパーたちはまた別の学校に通っています。本人の希望ではなく、能力や適性に応じて進学先が決まります。 ――“サイド・オーダー”後のミズタは、どこで何をしているのでしょうか。どこかで姿を見ることはできますか? 井上 深海メトロで意識を取り戻したのち、自力で地上に脱出しました。その後はテンタクルズや8号の助けを借りつつ、おもにハイカラ地方でDJ活動や楽曲制作を楽しんでいるようです。 ちなみに、未払いだったDedf1sh名義の曲の使用料を回収したことで、当面の生活費は確保できました。 インドア派なのであまり表には出てきませんが、いつのまにかナワバトラー道場に登録されてしまっていたらしく、対戦を申し込むと律儀に相手をしてくれます。 ――工事が終わってカフェの広場ができているなど、ハイカラスクエアにはさまざまな変化がありますが、プレイヤーに見てほしいポイントはありますか? 井上 前作のファイナルフェスから4年後なので、それほど大きくは変わっていないのですが、スケボーエリアが人気になって整備が進んでいたり、工事中だったところが完成して、憩いの場や駅の入口ができたりしました。若者が中心に訪れる街ですが、ちょっとだけ落ち着いた感じも出てきています。 ヒメは『2』ではラジオ収録中にスナック菓子をつまんでいましたが、本作ではハンバーガーやポテトを堂々と食べるくらい収録に慣れてきています。注意してくれる人がいたほうがいいのかもしれません。 ――グソクさんも地上に出てきていましたが、ハイカラスクエアではどんな暮らしをしているのでしょうか? 井上 グソクさんが愛でている人形のUFOキャッチャーがハイカラスクエアに追加されたので、引き寄せられて来たようです。 地上にいても、慎ましく暮らしていて、たぶんあのカフェに開店から閉店までいると思います。比較的空いてるとはいえ、困っちゃいますね。 ――問題が解決されるまでの期間、ハイカラスクエアの住人たちはどのような状態だったのでしょうか? 井上 どことなくぼんやりした感じが続くのでバリバリ動くタイプの人は困っていたと思いますが、ゆるめに過ごしている住人が多かったので一応街としては機能していたみたいです。 ――ちなみに、秩序の塔で出てくる自販機の敷き物に、どこかで見たようなウニの気配があるのですが考えすぎでしょうか? 松本 秩序の塔は、いろいろな人の記憶が積み重なってできています。塔の中で買い物できるスペースと路地裏というイメージが結合していまの自販機コーナーになっているのだと思います。 サウンド面でも記憶が重要なキーワードに ――サウンド全体のコンセプトやテーマなどを教えてください。 須戸 ネリバースの風景は消毒された者たちの記憶が投影されていて、コンセプト段階では下層フロアはイイダたちが幼少期に過ごした無機質だけど穏やか施設などをイメージしていました。 メインテーマにはそういう“なくしてしまった、温かくて懐かしい記憶”を感じさせるような、やさしさと切なさ、誰か親しい人たちの声などが入り混じったような曲になりました。 また全体としては、下層ではそういった“誰かの懐かしい記憶”を感じさせる曲だったものが、上層へ行くにつれて“行き過ぎた秩序”によって細切れにされて乱暴に整列されたような、ある種のいびつさを感じられるようなアレンジにするというコンセプトがありました。 ちなみに曲を奏でているのはステージの周りを泳いでいる記憶の魚たちで、“Mnemonic Clouds”と呼ばれています。 ――ディスクを集めたときにハイカラニュースのイントロが流れますが、あれはどういうイメージなのでしょうか? 須戸 ディスクを集めたときに流れる音は、ヒメドローンのスピーカーから再生されています。「これからも変わらずヒメといっしょにいたい」というイイダの想いが反映されて、ずっといっしょにやってきたハイカラニュースのイントロが流れるようになったのかなと思います。 ――イイダの懐かしむ気持ちで敵の動きを止めて助けてくれるのはエモい……。各ボーカル曲についてお教えください。イイダ・エジタンド戦の曲はイイダのソロ曲ですか? 須戸 『Monologue』ですね。名義でいえばその通りで、イイダ初のソロ曲ということになります。しかし、この曲を作ったことも歌ったことも、救出されたイイダは覚えていないと思います。あとでヒメから話を聞かされて、赤面しているかも。 ――いつかライブでも歌ってほしいです。オーダコ戦の曲はチャイナな印象を受けました。 須戸 再戦曲『ミーチュー・アゲイン』でしょうか。とくにエスニックにするつもりはありませんでしたが、メロディーの音階には確かにそんなムードがあるかもしれません。 『Monologue』のイイダのハードさとバランスをとるように、この曲ではヒメのキュートさを前面に出して、同じオーダコ戦でも初回とはギャップのある、軽快で能天気な曲にしたいと思いました。 タイトルは“再戦”であることと、響きのかわいらしさから決めました。 ――ラストバトルの曲は『フルスロットル・テンタクル』のアレンジバージョンだと思いますが、ミズタが加わったバージョンになるのでしょうか? 須戸 終盤に重要な役割を担う『オンリー・オブリガート』のメロディーが『フルスロットル・テンタクル』ではサビのボーカルと同時進行しています。 ミズタ(Dedf1sh)は確かに参加しており、地味に後方でイイダとスクラッチの掛け合いをしていたり、パッドやキーボードのプレイもしています。テンタクルズに敬意を払って、声は発していません。 ――最後に、『スプラトゥーン』のファンの皆さんへのメッセージをお願いします。 井上 “サイド・オーダー”は、本編の拡張としてのダウンロードコンテンツであるとともに、新しいことを開拓するための挑戦も兼ねて開発を進めました。新たな試みをいろいろしていますが、無事お届けすることができてホッとしています。たまにはこういう“秩序”な世界もいいかな、と感じてもらえたらうれしいです。 『スプラトゥーン』初心者攻略記事 効率的なインクの塗りかたやイカロールのコツなど、初心者向けの攻略記事をお届け中。一覧は下記から。バトルはもちろん、サーモンランで役立つ情報も掲載しています。ウデマエがなかなか上がらない人もぜひチェックしてみてください! 『スプラトゥーン』シリーズ注目記事 シリーズのインタビュー記事や、公式Twitterで公開されたイラストのまとめ記事も合わせてお楽しみください!