「お前は祖国が嫌いなのか?」...神経性発作まで追い込まれた女性ジャーナリストへの止まらない「誹謗中傷」ロシア秘密警察の「残酷すぎる黙らせ方」
誹謗中傷での精神的圧迫
「わたしはもうさんざん誹謗中傷されてきました。ただ自分の市民としての立場を表明しただけなのに。あなたたちはロシア国民に恐怖を植えつけたのよ。みんなはあなたたちを恐れ、奴隷のように黙っているんだわ。なぜあなたたちはマスクで顔を隠すの? 自分の仕事が恥ずかしいの? あなたたちには、何の罪もないのに苦しめられた人たちに対する責任があるのよ」 捜査官の口からは、強烈な罵り言葉が出た。わたしが西側の諜報機関と通じていると非難することで、心理的圧迫を加えるつもりだ。 また神経性の咳の発作が始まった。窓のほうを向き、押し黙った。プーチン体制の忠実な守り手とこれ以上話したくなかった。クルマは小さな2階建ての警察署に着いた。わたしは建物の中に連行された。 「トイレに行きたいんだけど」わたしはそう言って、「女性用」の表示のあるドアのほうへ毅然として向かった。 警察官が一人、わたしの後についてきた。トイレの個室で2台目の携帯を取り出し、急いで弁護士にメッセージを送った。わたしのことをモスクワ中捜しているだろう。ドキドキして指がタッチスクリーンの上を滑り、うまく文字を拾えなかった。 「クラスノセロー警察署」そう書いて「送信」を押した。 しばらくしてザフヴァトフ弁護士が署に駆けつけた。 「今度は軍を誹謗中傷した行政法の条文で訴えられています。具体的には、ヤーシンの裁判の時、バスマン裁判所の前であなたが記者のインタビューに答えた内容が気に入らなかったんです」ザフヴァトフ弁護士が言った。
下される有罪判決
「憲法違反のあの条文で、2つ目の行政事件となるわけだ。わたしを黙らせたいのね」 そのまま解放されて、わたしは外へ出た。細かな雨が降っていた。 弁護士の携帯は記者たちからの電話で何度も中断された。 「何かコメントを出しますか?」ザフヴァトフが尋ねた。 「いいえ。身柄拘束は考えもしませんでした。本当のことを言うと、神経が張り詰めて、寒くて、とても疲れました。タクシーを呼んでください」 皆が寝静まった深夜に、わたしは帰宅した。 その数日後、裁判所はロシア軍の信用を毀損した罪で、2つの行政法違反の有罪判決をわたしに下した。5万ルーブルと4万ルーブルの罰金が科された。 『「4歳の少女が砲撃でバラバラに」...抗議活動を決行した女性のもとに15分で駆けつける、ロシア当局の「ヤバすぎる監視の真実」』へ続く
マリーナ・オフシャンニコワ
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