「女らしさ」「男らしさ」を押し付ける就活にNO!
大学と企業の責任転嫁
当時、SNSには自分と同じように就活セクシズムに苦しみ、怒る学生の声が無数にあったが「そのころはこれが差別だと気づけなかった。社会に訴える方法があることも知らなかった」と水野さん。苦しいのは自分が間違っているからだという思いは消えず、就活を続けることができなくなった。 そんな水野さんの背中を押したのは、差別に声を上げ、変えようとする人々の姿だった。19年には職場でのパンプス・ヒールの強制をなくそうと石川優実さんが始めた「#KuToo」運動にも参加。「自分や多くの学生が感じてきた『怒り』を、なかったことにはしたくないと思った」とふりかえる。 水野さんが憤るのは「就活関連企業も専門学校・大学側も責任の押し付け合い」という構造だ。「選考はブラックボックスで本当の採用基準は不明。それなのに就活関連企業は『採用側がどう思うかわからないから化粧しておいた方がいい』と言い、就職率を気にする大学側は『だったらそうした方がいい』とする」と指摘。「大学側は本来、学生の側に立って『こういう表現は性差別だから駄目です』と言うべき。でもそれを受け流して差別を拡散・再生産している。そして一番弱い立場の学生が主体性を奪われる」と批判する。 SSS発足から4年。活動はメディアでたびたび取り上げられた。署名受け取りすら拒否する企業がある一方、以前はヒール付きの靴しかなかった「就活コーナー」にヒールのない靴を並べるようになった企業もある。上げ続けた声が変化につながっている。 水野さんは「就活の場に限らず、社会規範として性別二元論や性差別が蔓延している。就活本や就活サイトに怒るだけではなく、社会全体の問題になるようにもっと『声』を大きくしていきたい」と展望を語った。
三浦美和子・ジャーナリスト