深海の熱水噴出孔の岩をめくったら多彩な生きものがいた、驚きの発見、地下に未知の生態系
深海の生きものを守るには
深海生態系に対する最大の脅威の一つが、現在提案されている深海採掘だ。深海の海底からコバルト、ニッケルなどの鉱物資源を採掘するというもので、科学者や環境保護団体が反対している。 「つながっている小さな空洞がどれくらいの範囲にわたっているのか、海底の下にどれくらいの生物多様性、生物量があるのかわかっていません」とラウアー氏は話す。「文字通り、全く別の層がここにあるのです!」 海底の生態系はおそらく相互に結びついているため、広範囲の海底を保護する必要があるとラウアー氏は考えている。 「これらの生息地を破壊してしまう前に、少なくともそこに何があるかを知っておかなければなりません」と米ボストン・カレッジの生物学者ヘザー・オーリンズ氏は訴える。オーリンズ氏は今回の研究に参加していない。 ゴルナー氏によれば、この地下の生息域がどれくらい深く、どれくらい広がっているかは不明だ。目に見える熱水噴出孔だけでなくシステム全体を保護するには、その把握が不可欠だ。 熱水噴出孔の研究、そして、将来の研究のために保存することは、科学者が地球外生命の条件を理解する助けにもなる。 「もし太陽系に地球外生命が存在するとしたら、生命を支えているのは太陽エネルギーではないでしょう」とオーリンズ氏は言う。太陽系には、私たちが知る生命に適した地表を持つ天体はほかにない。 しかし、極限環境生物が存在できる場所はある。氷の地殻の下に海がある、木星の衛星エウロパのような場所だ。 「火山活動と海があることはわかっています」とオーリンズ氏は話す。「太陽系のどこかに、熱水噴出孔にいるような生命が存在していてもおかしくありません」
文=Olivia Ferrari/訳=米井香織