『光る君へ』木村達成の自信に溢れる表情は心に残り続ける 三条天皇の最期に込めた思い
吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第44回「望月の夜」の放送後には、藤原道長役の柄本佑、藤原穆子役の石野真子、敦明親王役の阿佐辰美、そして三条天皇役の木村達成が登場した。 【写真】安らかな顔をしていた三条天皇(木村達成)の最期 第44回では道長が公卿らにも働きかけ、三条天皇に譲位を迫る。三条天皇は対抗策として、自身の姫皇子を道長の息子・頼通(渡邊圭祐)の妻にするよう提案するが、頼通はこの提案を拒否。道長は悩んだ末、教通(姫子松柾)に命じて、頼通が怨霊によって重病に冒されているという噂を流す。万策尽きた三条天皇は、敦明親王を東宮とすることを条件に譲位を承諾した。 一条天皇(塩野瑛久)の譲位により即位した三条天皇は、政に対して強い意欲を持った人物だった。しかし、人事などを通じて道長を取り込もうとするもうまくいかず、道長との間には軋轢が生じる。加えて、志半ばで目と耳を病み、帝の務めは果たせないとして譲位を迫られていた。譲位後、長年連れ添ってきた娍子(朝倉あき)と敦明に見守られながらこの世を去る場面では、やつれきった顔つきに彼の無念さが強く表れている。「闇だ……」「闇でない時はあったかのう……」と口にする弱々しい声色が切ない。それでも、三条天皇は最期まで一貫性のある人物であり続けた。特に、娍子への一途な愛情はぶれることがない。「闇を共に歩んでくれて、うれしかったぞ」という言葉は穏やかで優しく、娍子への愛に満ちていた。 番組公式ガイドブックにて、木村は「監督からは、明るいキャラクターでいてほしいというお話があったので、それを心に置きながら演じています」と語っている。一条天皇の東宮として20年以上過ごし、即位後も不遇な境遇にあった三条天皇を演じる上で、木村はイキイキとした佇まいを徹底し続けたように思う。 またインタビューにて、木村は三条天皇についてこう振り返った。 「置かれている立場も苦しかったと思いますけど、一生懸命楽しんでいるわけではないと思いますけど、それこそ謳歌したような感じはあったかなと」 「それこそ道長との駆け引きのシーンも、わりと楽しんでいるようには僕は受け取ってはいたので」 「やっと長い東宮時代から晴れて帝になれたっていうのもあったぶん、そこらへんの政治・政を動かすのも、心は躍っていたような気持ちはしますけどね」 第44回での「万策尽きたか……」と呟く面持ちにはさすがに口惜しさが感じられたが、あらためて道長との場面を振り返ってみると、三条天皇が駆け引きに苦心しているようには見えない。情が深いゆえ、心が揺らぐ場面が度々見受けられた一条天皇とは異なる天皇像が確かに感じられたのは、木村の三条天皇に対する解釈とそれに伴う演技があったからこそ。どこか切ない最期ではあったが、三条天皇の自信に溢れる表情は心に残り続けている。
片山香帆