“007”を悩ませるヤクルトの謎
ヤクルトの沖縄・浦添キャンプを訪れているセ・リーグのスコアラーが嘆いていた。 「新戦力をチェックにきたけれど、新人はいないし、キーになる新外国人もキャッチボールに毛が生えたようなピッチングしかしていない。2日いたらもうレポートに書くことがなくなった」 ヤクルトのキャンプメニューは基本形だ。 アップからキャッチボール、シートノック、投内連携をすると、ピッチングとフリー打撃。内野のサインプレーの確認を一日したが、まだシート打撃などの実戦練習に入っていない。 開幕に出てくるであろう新戦力は、FAでロッテから移籍した成瀬善久(29)、日ハムから移籍した大引啓次(30)、新外国人投手のローガン・オンドルセク(29)、そして即戦力の期待を込めて獲得したドラフト組。1位の左腕、竹下真吾(九州共立大―ヤマハ)、4位の寺田哲也(四国ILリーグ香川)、5位の変則左腕、中元勇作(近大工学部―伯和ビクトリーズ)らだ。 他球団の007からすれば、成瀬、大引の力は、すでに把握しているため調整具合をチェックする程度でOKだが、新外国人投手とルーキーの実力は、早い段階で把握しておきたい。だが、「張り切りすぎてハイペースになって潰れては困る」という真中新監督の配慮で、ルーキーの沖縄1軍キャンプへの合流予定は11日以降となっている。 新人チェックができないのと同時に、ストッパーとしてチームの命運を握ることになるオンドルセクも、一向にその本性を見せない。連日ブルペンに入るのだが、投球はメジャー式で40球まで。2m超えの長身から投げ込む角度のあるストレートは、150キロの前評判だったが、そのストレートは、まだ130キロ程度。レッズで通算5年、中継ぎとして281試合に登板し21勝11敗2セーブ、防御率3.89の数字を残した片鱗が見えない。ピッチングも変化球主体で、その中に驚く魔球のようなウイニングショットもなかった。 「まだ、この時期にアメリカではピッチングなどしない。環境へ慣れている途中。日本のボールはアメリカのものに比べると滑らずしっとりとしているからね。変化球がどう曲がるかを色々と修正している段階だ。不安はないよ。7、8、9回のイニングのどこかで行け!と言われれば、どこのポジションでも投げる」 オンドルセクは、そう語っていたが、この超スローペースは、他球団のスコアラーからすれば、その実力をまったく把握できないので困りものなのだ。 「投内連携の動きを見る限り、背丈が大きい割には、そこまでは鈍くはない。ピッチングは見ているけれど参考にならない。ずっとあの程度のままなら怖くないけれど、本当に上がってくるんだろうか?」 セ・リーグの某球団スコアラーも、こんな疑問符を投げかけていた。