センバツ高校野球 東北、粘り及ばず 笑顔で全力プレー /宮城
第95回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は18日開幕し、12年ぶり20回目出場の東北(宮城)は第1試合で山梨学院(山梨)と対戦した。ハッブス大起、秋本羚冴の力投に打線も応えて終盤に粘りを発揮したが、1―3で惜しくも敗れた。試合前の開会式では、新型コロナウイルス感染拡大の影響で見合わせていた選手全員での入場行進が4年ぶりに行われた。仙台育英(宮城)と能代松陽(秋田)も甲子園の土の感触を確かめるように元気に行進した。【藤倉聡子、田中綾乃、近森歌音】 東日本大震災直後の2011年以来12年ぶりとなったセンバツのスタンドは、応援団で埋まった。音楽部部長の白石瞳奈さんは「甲子園は私たちにとっても晴れ舞台。ここに来られなかった12年前の先輩たちへの思いもこめて演奏する」と、約40人の部員とともに力強い演奏を響かせた。当時、監督としてチームを率いた五十嵐征彦校長も「思い切り楽しんで」とユニホーム姿で応援に加わった。 試合は五回に2点を先取され、追いかける展開に。それでも持ち味の「終盤の粘り」を七回に発揮した。1死から4番・佐藤玲磨が「チームに勢いを付けたい」との思いを込めて真ん中直球を左前へはじき返すと、布川碧の中前打などで2死一、二塁。7番・伊達一也が真ん中に入った変化球を強くたたいて三塁を強襲し、二塁打で佐藤玲磨を還した。 「チャンスの打席で緊張して震えていたが、スタンドの応援の声がすごく大きくて、もう応えるしかないと思った」と伊達。スタンドでは野球部の西城雄世さんが「部のモットーは『エンジョイ・ベースボール』。本気の楽しさを応援でも表現したい」と声援を送った。渡辺桜成さんも「昨秋の東北大会も八回にチャンスがきた。『東北の八回』に向けて、勢いづく点が入ってうれしい」とメガホンをたたく手に力を込めた。 七回裏に山梨学院が追加点を挙げ、2点を追う八回、先頭の佐藤響が中前打で出塁。相手バッテリーのミスで二塁まで進んだが、後続を断たれた。九回は3者凡退で試合終了。04年以来のセンバツ勝利はならなかったが、笑顔で戦い抜いた選手たちへの拍手は大きく、温かかった。 ◇選手主体、持ち味発揮 野球は選手が主体となってプレーし、楽しむもの――。昨年8月に佐藤洋監督が就任して以来、「エンジョイ・ベースボール」を追求してきた選手たちの春の挑戦が終わった。 「野球を子どもたちに返す」との信念を掲げる佐藤監督は、この日も極力指示は出さなかったという。その中で選手たちはそれぞれに持ち味を発揮した。 走者を背負ってからの投球が課題だったハッブス大起は、再三のピンチにも力のある速球で内角を突く攻めの投球。五回途中から継投した秋本羚冴は「練習してきたチェンジアップで三振を奪えた」といい、冷静なマウンドさばきが光った。4番・佐藤玲磨は、下半身強化の成果を2安打につなげた。 二、三回に迎えた満塁のピンチ。主将の佐藤響は「(監督の)洋さんが珍しく硬い表情で、僕らが『そんなに緊張したら、選手まで緊張してしまいます』と言ったんです」と明かし、「笑顔で楽しむ、そういう野球はできた。悔いは無い」と胸を張る。 一方で、序盤から守勢に回り、最後まで試合の流れを引き寄せることはできなかった。「チームとして甲子園の雰囲気にのまれたところはあった」と佐藤響。個々の力や笑顔をどのように結集してチームの力にするか。「やってきたことは間違いでないと確信した。でも、悔しい」という選手たちの夏に向けた再挑戦が始まる。