米国のインフレ再燃が「バイオ企業」に特に巨大な打撃となる理由
米連邦準備制度理事会(FRB)は12月18日、3会合連続の利下げを発表した。しかし、FRBのパウエル議長が根強いインフレやその他の経済要因により、来年の利下げの回数がこれまでの想定の4回から2回に減る見通しを示したことで投資家は失望し、主要な株価指数は下落した。 特に下げが大きかったのはバイオテクノロジー関連銘柄だ。18日の市場でS&P500が3%安、ナスダックが3.6%安だったのに対し、バイオテクノロジー指数のXBIとSPBIOSは約5%安、ナスダックのバイオテクノロジー指数も4.2%安だった。 「バイオテク株は、継続的な資金調達ニーズがあることから、金利に敏感な傾向がある」と、資産運用会社ハイビスタ・ストラテジーズのパートナーであるニールス・ピーツ=ラーセンは話す。今回のFRBの発表は、この分野のスタートアップにとって打撃だ。FRBのインフレ対策の利上げによって2022年と2023年のバイオテクノロジー分野への投資額は減少していた。 今年の年初からの利下げによって投資はやや増加したが、それでも現在の投資は「FOMO(取り残されることへの恐怖)」を背景としたものであり、革新的な取り組みを推進するものではないとウィング・ベンチャーズのサラ・チョイは指摘した。 この悪循環から抜け出すには、新規株式公開(IPO)やM&Aの件数の増加が必要だとチョイは述べている。それにより投資家が成功体験を得られ、流動性が向上することで「バイオテク市場が安定し、反応過多を和らげる助けになる」と彼女は述べている。 しかし、金利の高止まりは投資を妨げ、革新的な技術を持つスタートアップの育成を難しくする可能性がある。「借入コストの上昇は、スタートアップの研究開発資金やランニングコストを高くし、イノベーションを鈍らせる」とピッチブックのアナリストであるカジ・ヘラルも指摘した。 想定以上の高金利は、他の影響にもつながる可能性があるとヘラルは述べている。その1つは、「より予測可能なリターンが得られるセクター」への投資が増えるため、バイオテク分野のスタートアップが資金を調達しにくくなることだ。また、大手の製薬会社によるM&A活動が減少することで、この分野のスタートアップのエグジットの機会が減少することも懸念される。