認知症の早期発見と予防策 推計では2060年に850万人→645万人に減少 読書、将棋、麻雀、カラオケ…脳を活性化
2060年には65歳以上の5・6人に1人が認知症になる―。厚労省の研究班が最新の推計を公表した。ただ、認知症の人の数は前回の推計に比べると約200万人減少しており、生活習慣の改善などで〝予備軍〟とされる軽度認知障害(MCI)から認知症への進行を食い止めることへ期待も見えてきた。改めて早期発見策や予防策について、専門家に聞いた。 厚労省の推計では、認知症の高齢者は25年に471万人で、65歳以上人口がピークを迎える40年には584万人、60年には645万人で、高齢者の17・7%を占める。MCIも60年に632万人に達し、「2・8人に1人」が認知症かMCIになるという。 ただ、前回(15年)の推計では、認知症の人は25年に675万人、60年に850万人だった。それぞれ200万人程度減っている。 神経救急を専門とする近畿大学病院の大槻俊輔教授は「一般的なアルツハイマー型の場合、加齢、高血圧や糖尿病、脂質異常症などにより、リンパや血液の流れが滞り、脳に老廃物がたまることが原因とみられるが、生活習慣に気をつかう人が増えたことも推計の下方修正に影響しているのではないか。ただ、認知症の人が年々増えていることは確かで、待ったなしの状況であることに変わりはない」と警鐘を鳴らす。 年齢とともに認知機能は低下していくことは避けられないが、「物忘れ」と認知症の境界線もある。 大槻氏は「モノを置き忘れる、顔を見ても名前が思い出せないなどの物忘れは健康な人でも起こりうる。ただ、人の顔自体を思い出せない、会った経験自体を忘れる、買い物の支払いの簡単な計算ができない、自宅や駅、道順が分からないなど、社会生活に支障を来たすことが持続すると認知症の疑いがある。自覚の有無は人それぞれで、周囲が異変に気付くことも必要だ」と話す。 65歳未満も人ごとではない。厚労省が20年に公表した若年性認知症実態調査では、18~64歳の人口10万人当たり50・9人だった。 大槻氏は「65歳以上に比べると圧倒的に少ないが、40代後半から50代前半の働き盛りの世代で、複数の業務を同時にこなせなくなったり、運転時に注意散漫になったりして気付くケースがある」と指摘する。