〈奥能登豪雨〉復興半ば、また崩落 本社記者ルポ 輪島・町野 目前で地滑り「もうダメか」
「バリバリバリ」。竹が割れるような音が聞こえ、地響きとともに目の前の山が崩れ落ちた。21日午前、輪島市町野町の道路を車で走行している最中だった。異変を察知し、前方を走っていた車ともども巻き込まれずに済んだが、「もうダメか」と思うほどの恐怖を感じた。(能登支局長・新谷彰久) 【写真】陥没した道路を見る住民=21日午後、珠洲市上戸町寺社 午前9時ごろ、輪島市町野町曽々木へ向かおうと能登町宇出津の能登支局を出た。県道「宇出津・町野線」を走ること約30分、路上が土砂でふさがれていた。このまま進むのは危ないと思い、すぐさま引き返した。 しかし、帰りの道は倒木で通れず、再びUターンして町野方面へ。迂回路を探して町野川に架かる「谷内橋」を渡ると、今度は道路が冠水していて先に進めなかった。 あきらめて戻ろうとした矢先、目の前で土砂崩れが起こった。大量の土砂が大木を巻き込んで斜面を滑り落ち、路上をあっという間に埋め尽くした。 能登町へ戻る道が全て寸断され、近くにある町野町桶戸の集落を訪れた。区長の米川恒夫さん(74)は「地震に続いての大雨。これほど降ったのは初めてや」と不安そうだった。 集落は電線が切れた影響で停電となり、水道施設のポンプが停止して水も通っていなかった。水も電気もない状況は能登半島地震後にもあったが、1年とたたずに再び経験するとは思わなかった。 ●記事送信できず せめて町野の現状を記事にしなければと思い、車内でパソコンの電源を入れた。しかし、電波状況が極めて悪く、送信することができない。辛うじてつながった電話で、同僚に口頭で内容を伝え、代筆をお願いした。 その途中、弁当業者に出会った。被災地で復旧支援に取り組む事業者向けに昼食を運ぼうとしていたが、途中で立ち往生したそうだ。廃棄するのはもったいないと、集落の住民らに配ることにしたという。 今晩は車中泊。寒さに凍える心配はないが、雨にぬれたせいで少し肌寒い。一夜明ければ孤立は解消されているだろうか。不安で寝付けそうにない。