王道ラブストーリーの『ミス・ターゲット』は挑戦的なドラマだ すみれの空回りが愛おしい
あざとくてかわいいすみれ(松本まりか)
すみれは、あざとくてかわいい。男性を夢中にさせるのなんて、簡単なはずだった。それなのに、宗春の前ではあざとくもかわいくもなれない。本作のポスターに書いてある「なんでだろう。本気の恋だけ、叶わない。」というコピーが、すみれの心を的確に表現しているように感じる。 第4話、筆者のなかでとくに印象に残っているのは、宗春に「俺、すみれさんのことが好きです」と告白されたあとのすみれの表情。“好きです”なんて、これまで何度も男性から言われた台詞のはずなのに、すみれはまるで初めて聞いたかのように目を丸くして、ハッとした表情を浮かべていた。 そして、宗春に別れを告げたあとの涙。もしかすると、すみれが恋愛のことで泣いたのは、これが初めてだったのかもしれない。男性を落とすのは百戦錬磨だけれど、恋愛はまったくの初心者。誰かを好きになるとうれしくなること。苦しくなること。好きだと言われたときの幸せ。いろいろな感情を与えてくれたのは、宗春だ。器用なはずのすみれが、彼の前では不器用になって空回りしてしまうのが、愛おしい。 すみれを見ていると、計算できる余裕がある恋なんて、本気の恋ではないんじゃないかと思う。本気で恋をすると、自分のことが嫌いになる。何もできないことを思い知らされる。こんなに苦しいのなら、やめてしまいたいけれど、彼がくれるたった一言でどうしようもなく幸せな気持ちになってしまう。せっかくそんな恋をさせてくれる相手に出会えたのに、すみれの初恋は散る運命だなんて……。いまは1秒でも長く、2人が笑い合える日々が続くことを願うしかない。
菜本かな