石丸旋風、衆院選…SNSで変わる選挙 テレビ持たない若者 SNSでの情報収集に「落とし穴」【広島】
広島ニュースTSS
岸田総理が退陣し、衆議院選挙が行われるなど大きく動いた政治の世界です。 全国的に見ても今年はこちら兵庫県知事選や都知事選をはじめ政治に対するSNSの影響が際立った1年となりました。 ネット・SNSをポイントに広島の政界を振り返ります。 【岸田文雄 前首相】 「私が身を引くけじめをつけ、総裁選に向かっていきたいと考えています」 今年8月、広島県選出の岸田文雄前総理が次期総裁選への立候補を断念。 1094日と戦後歴代8位の在職日数で総理退任となりました。 自民党をめぐる政治とカネの問題は身を引く決断に至るほど根強いものでした。 <国会> 「衆議院を解散する」 後を受けた石破総理は就任からわずか8日後に解散。 投開票まで戦後最短の日程で突入した衆議院選挙では政権与党への逆風がかえって強まる結果に。 【斉藤鉄夫 氏(当時・国交相)】 「もう絶体絶命でございます。どうかどうか、自公の旗を守らせてください。勝たせてください」 必死の訴えを見せるほど窮地に立たされた当時の現職大臣は辛くも小選挙区で勝利しますが、野党の新人が猛追をみせました。 【国民民主党 福田玄 氏】 「こんな展開を本当に誰が予想したかというような激戦を戦わせていただいた」 今年の衆院選で議席を大幅に増やし躍進を遂げた国民民主党からも広島2区で新人が比例当選。 立候補表明が公示日のわずか4日前と立ち遅れは否めなかったものの、連合広島の支援を受けるなどし、自民党のベテランをぎりぎりまで追い詰めました。 【自民党 平口洋 氏】 「(非公認候補の政党支部への)2000万円の話は論外。カウンターパンチですよ。非常に厳しい選挙だった」 公示前は7議席だった国民民主党が支持を拡大させた背景にあるのは現役世代を重視した動画配信・「SNS」の活用です。 党の幹部が応援で広島入りすると街頭には写真撮影を待つ長い列もできました。 SNSの影響力といえば… 【安芸高田市 石丸伸二 前市長】 「居眠りをする。一般質問をしない。説明責任を果たさない。これこそ議会軽視の最たる例です。恥を知れ恥を」 <安芸高田市議会 YouTube公式チャンネル> 「恥を知れ恥を。という声が上がってもおかしくないと思います」 市議会や会見を動画投稿サイトに発信し、その発言が大きな話題となった安芸高田市の石丸伸二前市長。 市長を1期で辞職して挑んだ今年夏の都知事選では、SNSを駆使して得た知名度の高さが驚異的な追い上げへとつながり、およそ166万票という2番目の得票数となりました。 <不動院「すす払い」広島市東区 12月> 「ハイチーズ!」 今年は特に、政治の世界で影響力が際立ったSNS。 その情報発信に岸田前総理も以前から力を入れています。 <岸田文雄氏 公式インスタグラム> 地元選挙区に戻ったときには行事に参加した様子などをこまめに投稿。 時には自虐を織り交ぜ、親しみやすい印象を前面に打ち出す戦略で、コメント欄には「意外な一面が見られる」などと反応も上々です。 FNNの最新の世論調査では「ネットの選挙運動を参考にするか」という問いに対し「大いに参考にする」または「ある程度参考にする」と答えた人の割合は若い世代ほど高いことがわかります。 TSSライク!のコメンテーターを務める広島大学大学院・匹田篤 准教授。 社会情報・メディア論が専門でSNSを選挙でどう活用しているか学生たちに問いかけます。 【学生は】 「各政党の比較サイトを見て、この党はこういうことを言っているんだというのを見て、一番よさそうところに投票する」 「テレビ見ないというか、うちにテレビがない。テレビの切り抜きがSNSで流れてくる」 情報収集にSNSを活用するのが当たり前の今、匹田准教授はある落とし穴を指摘します。 【広島大学大学院・匹田篤 准教授】 「ネットで調べるときには自分がもともとどういう風なものに興味があるか、自分の好きなものだけに囲まれたメディアになりがちだっていうのが、フィルターバブルというんです」 フィルターバブルとは、SNSで閲覧履歴などから利用者にとって自分好みの情報が知らないうちに選択される現象。 この日、学生たちはSNSで同じ単語を検索しましたが、それぞれの検索結果は異なるものに…。 こうした偏りが政治の情報収集でも起きている可能性があるといいます。 【学生は】 「流れてくるのを押して読んだら、そういう政治の投稿が増えていって…ずっと出てくる政党の名前が頭の片隅に残っているとか、そういう状態はあったような気もするので、影響を受けないことは難しいかな」 メディアとしてのSNSの存在感が高まった一方、テレビ報道は「オールドメディア」と批判を受けました。 【広島大学大学院・匹田篤 准教授】 「視聴率とか、みんなが喜ぶようなコンテンツにとらわれてしまって、ゴシップ記事だとかそういう重みが増してくる。人間にとって悪口や失敗は無視できないもので、見たくなっちゃうけども、本当に伝えなくてはいけないのは、物事の本質は何なのか。ということだと思うんですね」 その上でテレビ報道のあり方については…。 【広島大学大学院・匹田篤 准教授】 「候補者全員に公平でないといけない。限られた時間の中で報道しないといけない。というで中、この選挙では一体何が問題・争点なのかということを切り込んでいってほしいですよね。1人1人の発言を聞いているとなかなか整理できない争点をマスメディアは整理をして、そういったことの努力をやめないでもらいたい、テレビは」 <スタジオ> 関心を持つこと、これ自体非常に大切なことなんですけど、SNSとの付き合い方が難しい部分もあります。 【コメンテーター:信友直子さん 呉市出身】 (映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」監督) 「兵庫県の斎藤知事の再選までの流れを見ていると、本当ちょっと恐ろしいような気持ちになったんですけど、どんどんどんどん、なんか悲劇のヒーローみたいにSNSで祭り上げられていくのを感じて、私、神戸に知り合いがいるんですけど、その知り合いに話を聞いたらやっぱり、その気持ちになってるんですよ。なんか、既得権益にメスを入れているヒーローなのに…。みたいな感じになっていて。そういう人は、YouTubeを見て、それを『自分で調べた』って言っているんですね。それに関して、何で調べたって思えるのかっていうと、結局、何か検索して自分で見に行くから、テレビとかだと、流れてくるのを見るだけだけど、自分で検索して見に行くことで、『自分で調べた』って思えちゃうっていうことが、何かちょっと一つ落とし穴なのかなって思います」 一方で私たちテレビ報道あるいは新聞がオールドメディアと言われた部分も考える必要がありますね。 【コメンテーター:信友直子さん 呉市出身】 「結局なんか放送法で選挙期間中って、やっぱり全ての候補者、公平にしなきゃいけないみたいになって、本当に慎重な報道ばっかりしちゃいますけど、やっぱりそういうSNSで違う記事なんかのファクトチェックっていうのはしないし、何か選挙中であっても、しなきゃいけないんじゃないかなっていうふうには思いました」 テレビ報道では公示・告示の第一声のところから秒単位で揃えているわけなんですけれども、これまで私たちメディアっていうのは、その量での公平公正を担保してきたというような意識ではあったんですが、一方で有権者の皆さんにとって質の部分での公平さというのはどういったものなのか、この辺りをしっかり考えながら、同時にSNSももちろん便利なものなんですけれども、デマ情報にもどう立ち向かっていくのか、改めて襟を正す必要があると感じました。
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