V8エンジンの隠れた名車:アルファ・ロメオ・モントリオール 最高の901型:ポルシェ911 S 2.4 (1)
製造品質に優れる異端的なモントリオール
今回ご登場願った911 S 2.4からも、そんな事実を感じ取れる。ストロークが長く下向きに踏み込む、ブレーキとクラッチのペダルには慣れが必要。ステアリングコラムは固定され、ドライバーに対して位置が高い。 コクピットは広いとはいえず、身長が180cmを超えると窮屈。レカロのスポーツシートが今回の車両には組まれており、そんな印象が強い。筆者はぎりぎり170cm台だが、ダッシュボードを見下ろすような感じ。天井との距離には余裕があるけれど。 対するモントリオールは、アルファ・ロメオの歴史の中でも異端的だろう。デザインが奇抜だっただけでなく、クラシックなイタリア車でありながら製造品質に優れ、美声を響かせるエンジンは低回転域から粘り強い。 大西洋の向こう側で強化される排気ガス規制を、モントリオールは相手にしていない。その頃、アルファ・ロメオは北米市場で大きな存在感を誇っていたが、V8エンジンを載せているにも関わらず、アメリカで正式に販売されることはなかった。 このV8エンジンを開発したのは、同社のレーシング部門、アウトデルタ。製造コストは量産ユニットとしては高く、特性も公道向きとはいえなかった。当初は2.0Lの小排気量で、レーシングカーのティーポ33に積まれデビューしている。
ランボルギーニ・ミウラと似たボディ
チェーン駆動のオーバーヘッドカムと、フラットプレーン・クランクにドライサンプ潤滑を採用。オーバスクエアなシリンダーの圧縮比は11:1と高く、ツインスパークで、点火コイルは4基備わった。排気ガス規制への準拠など、不可能に近かった。 とはいえ、アルファ・ロメオはモントリオールへの搭載に合わせ、賢明な改良を施している。排気量は2.6Lへ増やされ、点火プラグはシリンダー毎に1本へ。滑らかに回るクロスプレーン・クランクが組まれ、機械式燃料噴射システムも新規に開発された。 フロントがダブルウイッシュボーン式のサスペンションは、当時の主力車種、105シリーズのアルファ・ロメオ・ジュリアから借用。同じく、リアはリジッドアクスルだ。ステアリングラックも同様だが、再循環ボール式と、当時でも新しい機構ではなかった。 新鮮味の薄いシャシーを補ったのが、大胆なボディ。1967年のカナダ・モントリオール万博で発表されたコンセプトカーそっくりなスタイリングを手掛けたのは、マルチェロ・ガンディーニ氏率いるベルトーネ社だ。 ランボルギーニ・ミウラとは、Cピラー部分が似ている。後端が立ち上がった、ブルボーン・ドアも、共通する特徴だろう。塊感が強く筋肉質でありながら、官能的で美しい。911 S 2.4と並ぶと、ハッとするほどモダンに見える。 この続きは、アルファ・ロメオ・モントリオール ポルシェ911 S 2.4(2)にて。
チャーリー・カルダーウッド(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)