Eveが身近な距離で語りかけた等身大の想い 『花嵐』ツアーSSA公演で届けた変わらないもの
前日にはなかった「ドラマツルギー」の披露も
恒例のNumaタイム(バンドマスターのNumaによるMC)を経て、いよいよライブは後半戦へ。近年の公演において鮮やかなハイライトを担う重要曲「虎狼来」「群青讃歌」の2連打の後、「昨日この曲やらなかったんだよ」「この曲やらないと締まんないよな」と告げて、「ドラマツルギー」へ。そのまま「アウトサイダー」「バウムクーヘンエンド」と渾身のライブアンセムを次々と繋ぎ、前半を凌ぐ熾烈な熱気を生み出していく。特に大きな歓声がフロアから巻き起こったのが、今回の公演で初めて実現した『呪術廻戦』関連楽曲「アヴァン」→「廻廻奇譚」のコンボだった。また、「ぼくらの」では、中央ステージに移動したEveが四方の観客に歌声を求め、観客が全力で〈それがヒーロー〉と声を重ねていく熱い展開も。怒涛の終盤を駆け抜けたEveは、「楽しいや。とにかく楽しい」と、目の前の観客とダイレクトにコミュニケーションし合える歓びを改めて深く噛み締める。 「これからも僕の音楽が、皆さんにとって、寄り添いであり、支えであり続けてくれたらいいなと思っています」「皆さん、どうもありがとう」という感謝の言葉の後、本編のラストナンバー「花嵐」へ。観客が手首に装着したPIXMOB(LEDバンド)によって会場全体がエメラルド色&水色に彩られ、その美しく壮大な景色の中を、勇壮なメロディと共に〈たった一つの勇気を 今授けよう〉という渾身のメッセージが響きわたっていく。ラストに放出されたカラフルな紙吹雪の効果も相まって、果てしない祝祭感に満ち溢れた幕締めだった。 「ラストダンス」から観客を沸かせたアンコールでは、2016年のアルバム『OFFICIAL NUMBER』から「sister」が披露されるという嬉しいサプライズが届けられる。また、Eveの呼びかけによって温かな大合唱が巻き起こった「君に世界」では、観客が掲げるスマホのライトによって会場全体が白く彩られ、彼が思わず「めちゃくちゃ綺麗」と呟く一幕も。そして、「お気に召すまま」で、この日のピークを再び更新するかのような熱狂を巻き起こして、今回のライブは熾烈な大団円を迎えた。 総じて、Eveと観客の距離が今まで以上に近く、また、双方のコミュニケーションが今まで以上にオープンになっていることを強く感じたライブだった。今回の公演を通して、リスナーとの揺るがぬ信頼と連帯を再確認した彼は、来年、全く新しい挑戦として初のアジアツアーに臨む。この先彼は、各国における新たな出会いを通して、どのような変化・進化を重ねていくのか。その答えは、アジアツアーのラストを飾る横浜の凱旋公演で明らかになると思う。期待してその時を待ちたい。
松本侃士